2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Qualitative Study of the Life Experiences of the Elderly to Contribute to Resilience in a Shrinking and Aging Society
Publicly Offered Research
Project Area | Lifelong sciences: Reconceptualization of development and aging in the super aging society |
Project/Area Number |
21H05339
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
笠井 賢紀 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (80572031)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 住民自治 / 地域社会 / 高齢者 / コミュニティ / 自治会 / 伊勢講 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は70歳代前半世代の生活経験を地域社会とのかかわりという観点から分析し、縮小・高齢社会における社会的資源として位置づけられる経験を明らかにすることであった。そのうち、2021年度(およびその繰り越しによる2022年度)における本研究の主たる目的は、翌2022年度以降に行う分析のために、異なる二つの性格を有する地域を対象として定め、基礎的な資料の収集とデータ化を行うことにあった。 伝統的集落Mでは、構成員が金を出し合い伊勢神宮に輪番で代参する「伊勢講」があり、これは今なお高齢者を中心とした地域社会の社交の場の一つである。そこで、M集落の全5伊勢講について、網羅的に勘定帳(帳簿)を収集し8割のデータ化を目指していたが、10割のデータ化を終え、分析を行った。分析の結果、同地の伊勢講は建前上は任意参加の講でありながら、実際には全住民を含み伊勢参宮以外の、コミュニティ維持の根幹にかかわる多様な機能を有しており、コミュニティの基礎的組織であったことが明らかになった。同機能は現在、自治会に継承されているが、子どもが地域とつながるための役割を果たしている民俗行事「左義長」同様に、大人たちがつながるための役割を果たす行事としても伊勢講を位置づけることができる。 これに対し、伝統を有さないニュータウンNでは、どのように地域社会が形成されていったかを明らかにするために1977年から現在までの「自治会報」をすべて収集し10割のデータ化を目指していたが、無事にこれを終えた。自治会報の内容変遷から、同地域の自治は萌芽期・混乱期・成熟期の3期に分類できた。萌芽期・混乱期においては居住第一世代の現役時代の組織化経験や社会・政治的運動の経験が活用されていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍につき、2021年度に予定されていた調査が行えず、2022年に繰り越した。しかし、2022年度には当初予定していた以上のデータ化処理と分析が進んだだめ、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、地域M・Nにおいてそれぞれインタビューによる生活史(life history)調査を行うことで、2021年度に行った文書調査を補い、質的混合調査の基礎固めをする。 具体的には地域Mでは現地のNPO法人と共同し「住まいの記憶史調査」事業として、家屋にまつわる記憶を中心に語りの収集を行う。また、地域Nでは地域内分権組織に協力を依頼し、20名ほどの高齢者の生活史を聞く予定である。 また、特に地域Mのような歴史的な集落においては、そもそも「地域社会」なるものがどのような単位であるのか、また、どのように重なり合っているのかということも分析の基礎的視角となりうる。そのため、県立公文書館や市立博物館に所蔵されている壬申地券に伴う地籍図や、字限図、並びに小字地名を調べた字取調書等の史料を撮影の上でGISデータ化し、その変遷についても分析するものとしたい。
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Research Products
(10 results)