2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the formation of the burying custom of horse skull in Mongolian Bronze Age
Publicly Offered Research
Project Area | A New Archaeology Initiative to Elucidate the Formation Process of Chinese Civilization |
Project/Area Number |
21H05361
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中村 大介 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (40403480)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 馬 / 頭骨埋納 / ヘレクスル / 草原地帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は漠北の前2000年紀末に現れる独特の風習であるウマ頭骨の大量埋納の出現背景を明らかにすることを目的としている。中国でも殷代からヒツジなどの家畜の頭骨副葬が散見され、北方の草原地の影響とされるが、ヘレクスルの事例はウマに限定されるのに加え、埋葬施設の外の遺構に埋納されるため、直接の比較はできない。そこで、草原地帯中・西部にはより古い頭骨副葬の事例を集成し、漠北の頭骨埋納の由来を検討した。 本年度はコロナ禍の全盛期であったため、モンゴルへの渡航は不可能であった。そこで、墓出土の動物骨を送付してもらい、年代測定を進めた。また、青銅器時代の墓の把握のため、モンゴル科学アカデミーの共同研究者に依頼して墓の報告及び論文を集成してもらい、その分布と年代を整理した。 以上のような作業によって、動物の頭骨を使った儀礼は、ドン-ヴォルガ川流域で銅石器時代に出現し、それが周辺に拡散した可能性が判明した。そして、東ウラルのシンタシュタ文化に受容されることでウマに特化し、アンドロノヴォ地平(文化群)を通じて東方に拡散することを明らかにした。また、埋葬施設外の埋納については、サヤン-アルタイ地域での変容であることもわかった。つまり、東ウラルからアルタイに到達した際に、ウマ頭骨の副葬から埋納に変質し、それがモンゴル高原で受容されたのである。ただし、モンゴル高原でのウマ頭骨利用は前1200年を遡るころから本格化するので、サヤン-アルタイ以西とは数百年の年代的乖離がある。今後はその検討が課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来フィールド調査を行う予定であったが、研究実績の概要で述べたように、コロナ禍の全盛期であったため、それが果たせなかった。そのため、計画自体を大きく変更し、分析資料の送付によって年代想定などの分析を行うことにした。それでも2020年12月までは輸送時代が不可能であり、その間は、モンゴルの資料に関しては、科学アカデミーで集成してもらいつつ、草原地帯西部・中部の報告書と論文の集成と分析を繰り返すことで、次年度の調査に備えた。なお、草原地帯西部・中部の集成資料に関しては、発表を行い、その論文化する準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の達成のためには、モンゴルでのフィールド調査が必須である。ウマの頭骨埋納を行っている地域がどの範囲にあるのかを明らかにする必要がある。現時点では、ヘレクスルの分布はモンゴル中東部までであり、そこから東にはウマ及びそれを利用した頭骨儀礼が不明瞭である。そのため、モンゴル東部でヘレクスルと同時期と推定される墓の発掘調査を行い、ウマの利用についての実態を調査する必要がある。また、西部においては、ヘレクスルが多数みられるが、ウマの頭骨埋納遺構がどれほど伴っているかを再検討する必要もある。特に、ヘレクスルの前身であるサグサイ類型墓での動物利用については、不明瞭な点が多いことから、次年度はその検討も合わせて行いたい。
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