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2021 Fiscal Year Annual Research Report

近代日本におけるイスラームに関する知的動態とムスリム理解をめぐる知識社会学的研究

Publicly Offered Research

Project AreaConnectivity and Trust-building in the Islamic Civilization
Project/Area Number 21H05381
Research InstitutionNational Museum of Ethnology

Principal Investigator

黒田 賢治  国立民族学博物館, 現代中東地域研究国立民族学博物館拠点, 特任助教 (00725161)

Project Period (FY) 2021-09-10 – 2023-03-31
Keywordsイスラーム / 幕末 / 知識社会学 / 他者理解
Outline of Annual Research Achievements

研究初年度にあたる令和3年度においては、近代日本のイスラーム認識について明らかにするうえで、幕末に初めて中東地域を訪れた文久2年遣欧使節団によるアデン、スエズ、カイロ、アレキサンドリアおよび地中海海域の航海時の記録について焦点を当てた研究を行った。その際、随行員によって記された日記について翻刻され刊行済みの史料に加えて、未翻刻の史料についても利用した。その際に、随行員のイスラームや宗教と社会関係に関する描写だけでなく、随行員の背景的な知識や観察者としての立場についても明らかにした。本題であるイスラームについての描写については、先行研究でイスラームの描写について誤った認識で描写されていたという指摘されていたように、モスクの壁に掘られ礼拝時の方向を示すミフラーブに向かって行われる礼拝を仏像に対して拝んでいるというような記述があった。また豚の禁忌や穢れについて知らないという今日のイスラーム理解としては当然と思われるような知識も持ち合わせていなかったことを示唆する記述も見受けられた。
しかしながらほかの記述と合わせると、随行員たちにとって、イスラームを仏教の延長線上にとらえることで、異教や邪教というようなとらえ方ではなく、自社会(当時の日本社会)で信仰を実践することとの類似性を見出していたと捉えることができた。加えて、宗教と社会的慣習を結びつけるものの、オリエンタリズムのように社会の政治経済的状況との相関関係から遡及してイスラームを評価することはせず、信仰を尊重する態度を示していた。これらの研究成果については、すでに近代日本と中東・イスラーム圏との関係を思索する論集に寄稿し、刊行されている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実績の概要に示したように本年においては、文久2年遣欧使節団の記録を中心に作業を進めた。研究開始時には、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためデジタル化されている史料を利用しつつ、デジタル化されていない未翻刻史料のなかでも柴田剛中の『日載』が所蔵館での利用が困難であった。しかし他館で同じ資料が複写され、架蔵資料として所蔵していることがわかるなど、史料の利用について一段の作業量が増えたものの、解決することができた。他方、当初研究計画で予定していた利用した未翻刻史料をデジタル化し所蔵館との間で共創的な史料保存・利用を進めるという計画については、所蔵資料の権利関係などの問題があり、進展しなかった。しかしながら、すでに研究実績として成果公開の段階にまで、文久2年遣欧使節団の記録を基にした成果などが発信できたことを踏まえ、全体としてはおおむね順調に研究計画が進んだと評価できた。
加えて、ウェブサイトの記事として研究の概要を記すなど、一般社会に向けた成果発信/社会還元を行うことも一定程度行うことができた。

Strategy for Future Research Activity

スフィンクスとピラミッドの前で撮影された写真が残る横浜鎖港使節団(池田長発使節団)や文久遣欧使節団にも随行した柴田剛中を代表とした英仏派遣団など他の遣欧使節団の記録について精査することを次年度には進めていく。すでに一部史料については、本年度に収集し、読解を進めているが、それによって横浜鎖港使節団以降、幕府から正式に派遣された遣欧使節団による中東地域やインド洋航海時の記録が格段に減っていくことがある程度見通しが立ってきた。そこで幕府や各藩が西欧諸国に派遣した留学生たちの記録にも目を向けることで、幕末の日本人の関心の変遷とともに、イスラームやムスリムに対する知的関心の動向についても検証していきたい。
次年度が研究計画として最終年度に当たることから、それぞれの遣欧使節団の記録に基づく実証的な研究を行いつつも、渡航者たちの記録の細かな変遷に意識し、幕末という時代において起きた日本の思考様式の変容をモダニティの問題として高次のレベルで議論できるような研究計画を実施していきたい。さらに、日本のイスラーム/ムスリム理解について明治期にまで発展させるといった本研究に基づいた包括的研究へと深化させることも視野に入れながら、史料の読解と成果発信を進めていく。特に成果発信については、日本語だけでなく、英語などの外国語による成果発信を進めることで、日本研究などの諸分野の研究への国際的な学術貢献を図っていきたい。

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Japanese Steamship Companies and Pause of the Hajj from Southeast Asia in 1915: Economic Rationality behind the Muslim Mobility in the Indian Ocean and its Irony2022

    • Author(s)
      Kenji KURODA
    • Journal Title

      Annals of Japan Association for Middle East Studies

      Volume: 37(2) Pages: 1-30

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 近代日本とイラン国交樹立と交渉過程の検討2022

    • Author(s)
      黒田賢治
    • Journal Title

      イラン研究

      Volume: 18 Pages: 94-108

  • [Presentation] 経験的認識と自/他の境界―幕末日本のイスラーム体験2022

    • Author(s)
      黒田賢治
    • Organizer
      2021年度科学研究費学術変革領域研究(A) 「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築」全体集会 「信頼学のレシピ~素材と方法編~」
    • Invited
  • [Book] 「幕末日本のイスラーム発見――文久遣欧使節団の記述より」小野亮介・海野典子編『近代日本と中東・イスラーム圏― ヒト・モノ・情報の交錯から見る』2022

    • Author(s)
      黒田賢治
    • Total Pages
      385
    • Publisher
      東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
    • ISBN
      9784863373747
  • [Remarks] Blog #7 「幕末の「日本人」のイスラーム体験」

    • URL

      https://connectivity.aa-ken.jp/newsletter/525/

URL: 

Published: 2022-12-28  

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