2021 Fiscal Year Annual Research Report
Visualization of Time Evolution of Ion-Pair Distance in Dynamic Exciton Using Multiple Excitation
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
21H05395
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
五月女 光 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (60758697)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 励起子 / 電荷分離状態 / 対間距離 / 太陽電池 / 発光材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、光照射により生成した動的エキシトンの対間距離計測法の確立と光電変換固体材料への応用を目的として、多重励起型過渡吸収分光装置の改良・最適化と溶液中のイオン解離を例とした計測原理の検証を実施した。研究代表者が現有していた多重励起型過渡吸収分光装置を、動的エキシトンの電荷解離の観測に特化したものに改良した。具体的な改良点としては、電荷分離を誘起するためのPump光パルスと、光イオン化による逆電子移動を誘起するためのRepump光パルスの時間差を、現状のフェムト・ピコ秒スケールから、より長いナノ秒スケールまで拡張した。これにより、電荷分離状態の解離過程のうち、フェムト・ピコ秒で進行するhotプロセスだけでなく、有機半導体に普遍的にみられるcoolプロセスも含めて、動的エキシトンの解離過程を追跡することが可能になり、計測装置の汎用性が確保できた。さらに、原理検証の実験として、液相におけるイオンペアの解離過程に適用して、電荷分離状態を構成する電子アクセプターのラジカルアニオン種の光励起により、電子ドナーのラジカルカチオンへの逆電子移動を誘起して、それらの間の距離に応じて、逆電子移動の進行が異なることがわかった。この結果は、電荷分離状態の生成後、時間の経過とともに、対間距離が増大していくことを示すものであり、今後の太陽電池材料における対間距離ダイナミクスの可視化に向けて、そのフィジビリティが確認された。さらに、上記の研究に加えて、低波数ラマン顕微鏡を整備し、熱励起されうる低波数振動モードを検出可能な低波数ラマン顕微鏡を構築した。こうした動的な構造揺らぎは、動的エキシトン領域のスコープのひとつであり、本手法はこれを解析可能な分光ツールになりうると考えられる。これらの多重励起型過渡吸収分光と低波数ラマン顕微分光を利用して、現在領域内において5件の共同研究を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、当初の目標であった多重励起型過渡吸収分光装填の拡張、および液相における動的エキシトンの電荷解離プロセスの解析に加えて、本領域において重要な熱励起されうる構造揺らぎを可視化する低波数ラマン顕微鏡を整備することができたため、当初の予想より本研究を進めることができたと考えている。具体的には、既存の多重励起型過渡吸収分光装置に、新規に長尺の遅延時間ステージを組み込むことにより、フェムト・ピコ秒領域で進行するhotプロセスによる電荷解離だけでなく、有機半導体において普遍的にみられるcoolプロセスまで観測可能となった。この装置を用いて、逆電子移動による電荷再結合を評価することにより、時々刻々と増大していく動的エキシトンの対間距離を観測することに成功した。これにより、次年度に予定している有機半導体薄膜における対間距離ダイナミクスに向けてフィジビリティが確認できたと考えている。また、研究代表者はこれまでにフォトクロミック化合物などの光異性化ダイナミクスの研究を主として遂行してきたが、動的エキシトン領域における今年度の研究を通じて、光誘起電子移動や電荷分離反応の分子系のダイナミクスを解析するノウハウを習得することができ、今後領域内でより広範な分子系の分光解析を行うための下地が整い、5件の共同研究を開始するに至っている。さらに、当初は計画していなかったものの、並行してラマン顕微鏡を整備した。とくに、5 cm-1のテラヘルツ領域まで振動モードの検出が可能であり、熱活性化遅延蛍光分子をはじめとする動的構造揺らぎが重要となる分子系、材料系を解析する際に強力な分光ツールとなると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、液相におけるイオン解離に引き続き、これを太陽電池材料を始めとする有機半導体薄膜における対間距離ダイナミクスの計測に応用する。具体的には、P3HTとフラーレンからなる固体薄膜を原理検証のモデル系として、さらに領域内共同研究としてドナー、アクセプター分子からなる有機薄膜試料を検討している。遅い時間領域におけるcoolプロセスはもとより、高い光電変換効率において重要視されているhotプロセスが研究の主眼であり、hotプロセスのもとで電荷が空間的に解離していく様子を、多重励起技術を用いて計測、評価する。さらに、こうした過程では、光励起状態や電荷分離状態の非局在化が重要視されているため、励起子やイオン種の非局在化の程度を計測可能な、過渡吸収の異方性測定を援用して研究を進めていく。また、上記の研究課題と並行して、動的エキシトン領域において共同研究を継続して推進していく。現在までのところ計画班、公募班あわせて5つの研究グループと共同研究を開始しており、汎用的な過渡吸収分光に始まり、より詳細な構造情報が取得可能なフェムト秒誘導ラマン分光と超低波数ラマン分光を用いて、熱的なエネルギーで誘起されうる揺らぎや、それが生み出す電子状態と構造の相関が、材料機能に与える影響を解析していく。とくに、超低波数ラマン分光による熱活性化遅延蛍光材料の構造揺らぎ解析はこれまでに報告例のないアプローチであり、高い逆項間交差収率を実現するために、汎用的かつ効果的な分光解析手法になると期待される。
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[Journal Article] Molecular Crystalline Capsules That Release their Contents by Light2021
Author(s)
Akira Nagai, Ryo Nishimura, Yohei Hattori, Eri Hatano, Ayako Fujimoto, Masakazu Morimoto, Nobuhiro Yasuda, Kenji Kamada, Hikaru Sotome, Hiroshi Miyasaka, Satoshi Yokojima, Shinichiro Nakamura, Kingo Uchida
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Journal Title
Chem. Sci.,
Volume: 12
Pages: 11585-11592
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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