2021 Fiscal Year Annual Research Report
一重項分裂における動的エキシトン解析
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
21H05403
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
羽會部 卓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70418698)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 一重項分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子ドナー(D)とアクセプター(A)の異なるニ分子間(ヘテロダイマー)での光誘起電子移動(ET)による電荷分離(CS)に対して、一重項分裂(SF)は同種の色素の二分子間(ホモダイマー)でD-A的電荷移動(CT)が動的に関与しながら進行するスピン許容な多励起子生成反応である。SFにより高効率かつ長寿命な三重項励起子を得るには光励起後の三重項励起子対(TT)の形成からその開裂過程(TT→T1+T1)の制御が重要であるが、分子設計上で検討すべき構造パラメータが何か明らかでない。本研究では多様な配向と連結部位(スペーサー)を持つアセン系ホモダイマーを設計・合成した。 まず、SF発現において最も代表的なペンタセンとより長い分子長を有するヘキサセンについて色素間の配向を変化させた4種類の二量体を合成した。TTの生成についてはその発熱性の程度と色素間の電子カップリングに応じて反応速度は変化した。一方、TTの開裂過程に関しては遷移状態理論による活性化エンタルピーおよびエントロピーを算出した。その結果、それぞれの相補的な寄与、つまり、エンタルピーエントロピー補償効果が明らかとなり、分子振動が三重項励起子の生成量子収率に影響を与えることを明らかにした。 次に、上述の2つのアセンと比較して、より高いT1のエネルギーとTT生成の発熱性がより乏しい特徴を有するテトラセンに着目した。上述の電子カップリングだけでなく、新たに立体柔軟性に着目し、異なるスペーサー部位を有する計4種類の二量体を合成した。その結果、小さな電子カップリングと大きな立体柔軟性を有する4,4’-ビフェニル基で連結したテトラセン二量体において量論的な三重項量子収率(196 ± 12%)の実現に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラセン、ペンタセンおよびヘキサセンの各種二量体の一重項分裂の評価を完了し、二量体のスペーサーの選択には電子カップリングだけでなく、立体柔軟性を考慮するという重要な知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は二量体をオリゴマー化してその効果を検討する予定である。また、リンカー構造の制御による長距離SFの展開も試みる。
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Research Products
(8 results)