2021 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of delocalized Frenkel excitons at well-ordered organic semiconductor donor-acceptor heterojunctions exhibiting the band transport
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
21H05405
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中山 泰生 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 准教授 (30451751)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | バンド分散 / 角度分解光電子分光法 / 電子エネルギー損失分光法 / エピタキシャル成長 / 時間分解発光分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子状態の『非局在化』は半導体光エレクトロニクスの駆動効率を最大化するための必要条件であり,電子状態を非局在化させるには高秩序な分子配列が不可欠である。一方,有機半導体におけるキャリア・エキシトン変換には異種分子によるドナー・アクセプター(D・A)界面の存在が必要とされる。本研究課題は,分子単結晶表面上にエピタキシャル成長させた『単結晶エピタキシャル有機半導体D・A界面』を舞台として,そこに現れる非局在化キャリア・エキシトンの物性を究明することを目的とするものである。 キャリア・励起子の非局在化状態を最大化するためには,欠陥密度を可能な限り低減した高秩序な単結晶有機半導体D・A界面試料が必要となる。2021年度には,高純度な単結晶有機半導体D・A界面の作製のために必要な窒素置換グローブボックス(GB)の新規導入を完了しており,導入した装置を有機単結晶製造装置と直結することで,不純物生成を排した高秩序単結晶有機半導体D・A界面試料の製造が可能となる。なお,単結晶有機半導体D・A界面試料の構造は,高輝度かつ高指向性のシンクロトロン放射光施設(SPring-8)を利用した実験により精密評価を進めており,2021年度には高秩序構造を実現する「準ホモエピタキシャル接合」の提唱などの成果が得られている。 キャリアの非局在化は,角度分解光電子分光による電子バンドの運動量―エネルギー分散関係計測により実証することができる。研究代表者は,過去に角度分解光電子分光計測の単結晶有機半導体D・A界面試料への適用に成功した実績を有しており,本研究課題においても実施を計画している。一方,非局在化励起子の物性計測については,当初計画していた国際共同研究に加えて,レーザー励起発光分光計測の単結晶有機半導体試料への適用を国内機関との共同研究として進めることで,単結晶試料に特有の発光特性を得ることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,欠陥密度を可能な限り低減するために高純度窒素置換されたグローブボックス(GB)を新たに導入して有機結晶製造装置と直結し,GBを中継地点として一切の大気曝露を排して真空蒸着装置との間で試料をやり取りする装置を開発することを2021年度の実施内容として計画していた。これを踏まえ,高純度な単結晶有機半導体D・A界面の作製のために必要な窒素置換GBの機器選定と新規導入を2021年度中に実際に完了し,現在は単結晶有機半導体製造装置との接続を行っている。 並行して,単結晶有機半導体D・A界面試料の構造を精密評価するため,高輝度かつ高指向性のシンクロトロン放射光施設(SPring-8)を利用した実験を進めてきた。その結果,従来の単結晶有機半導体D・A界面よりさらに結晶性が良好な「準ホモエピタキシャル接合」を報告するなど,興味深い成果が得られ始めている。 単結晶有機半導体D・A界面試料における励起子物性の計測については,当初は主としてドイツの研究機関との共同研究としての実施を計画していたが,感染症の流行状況および国際情勢の変化を勘案して2021年度中の渡航は断念せざるを得なかった。代わりに,研究代表者が客員研究員を兼任する産業技術総合研究所において,レーザー光励起による角度分解発光計測を単結晶有機半導体試料に適用する試行実験を実施した結果,単結晶試料特有と思われる興味深い結果が得られている。 以上を総合的に考慮し,現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には,高純度な単結晶有機半導体D・A界面試料の作製のため,GB内を恒常的に窒素置換雰囲気に維持するために必要なガス循環精製装置および酸素濃度計を導入し,2021年度に導入したGBと一体化させることで,酸化不純物生成の原因となる残留酸素ガスへの曝露を極小化した環境において高純度有機半導体単結晶試料を扱うことができる専用装置の構築を完了する。また,2021年度に引き続き,シンクロトロン放射光施設(SPring-8)へ研究代表者および主宰研究室の学生を派遣し,作製したエピタキシャル有機半導体D・A界面の接合構造や結晶子サイズの精密計測を進めていく。 一方,非局在フレンケル励起子発現の必要条件である荷電キャリアの非局在性について,角度分解光電子分光による電子バンドの運動量―エネルギー分散関係計測を通して実証を進める必要がある。研究代表者は,これまでに分子科学研究所との共同研究としてこうした研究に取り組んできた実績を有しており,さらに本年度より同所の客員准教授を兼任していることから,共同研究の実施に必要な器材調達や学生派遣をこれまでより効率的に実施できる態勢が整っている。これを利用し,2022年度はより緊密な連携によりこの研究テーマの推進に重点的に取り組みたい。 励起子物性の計測については,本年度はドイツの共同研究機関への渡航の可能性を模索したいが,困難であることも想定しなければならない。こうした観点から,2021年度に試行的に取り組んだレーザー分光測定をさらに進展させ,これまで共同で開発を行ってきた時間分解分光法の単結晶有機半導体D・A界面試料への適用による,励起子の時間発展挙動の検証も視野に入れている。引き続き研究代表者主宰研究室の学生を派遣して計測実験を担当させ,国際共同研究実施が困難である場合も単結晶有機半導体D・A界面の励起子物性評価が可能な態勢を維持したい。
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