2021 Fiscal Year Annual Research Report
有機薄膜太陽電池界面における電荷移動型エキシトンの解離と動的過程
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
21H05406
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
村岡 梓 日本女子大学, 理学部, 准教授 (70614014)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 非フラーレン型太陽電池 / 電荷移動距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
光誘起エキシトンが自由キャリア(電子、正孔)を生成する過程として、2つの仮説が立てられている。1つは、D側で生成したエキシトンがD/A界面で電荷移動状態に緩和し、熱的に電荷移動状態の束縛が解かれることで電荷分離状態、すなわち自由電子キャリアを生成する「Cool process」と呼ばれる過程、1つは、エキシトンがD/A界面で電荷移動状態へ緩和せずに高速に自由電荷生成する「Hot process」と呼ばれる過程である。現在までに、高効率な有機太陽電池では、D側で生成したフレンケル型エキシトンが界面で電荷移動型(ワニア型)エキシトンとなり、その大きさ(電子-正孔距離)が変換効率と相関を有することを見出し、電荷移動型エキシトンが電荷移動状態に緩和せず、振電相互作用により弱く束縛した電子ポーラロン・正孔ポーラロン対を形成し、それらが解離してフリーな電子ポーラロンと、正孔ポーラロンになって拡散すると予測した。これは、Cool process、Hot processの選択の要因に、界面でのエキシトン状態における振電相互作用と考えられる。 そこで、有機薄膜太陽電池界面における電荷移動型エキシトンの解離と生成キャリアの動的過程について、エキシトン状態における振電相互作用と生成したキャリアのポーラロン伝導の観点から、エキシトンダイナミクス解明について理論的研究をおこなった。 近年、アクセプター分子にフラーレン型を用いた有機薄膜太陽電池に加え、小分子やポリマーをアクセプターとしたノンフラーレン型有機薄膜太陽電池に関する研究の進歩が目覚ましい。中でも、アクセプター分子の一部をフッ素化合物に置換することにより、フッ素基が電子を強く引き出しドナーから離れて電流を増加させるという報告がある。アクセプター分子とフッ素置換による影響について、D/A界面自由電子キャリアのメカニズムを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文執筆、及び国際学会での招待講演、国内学会で発表することができた。順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
大規模な密度汎関数計算によりエキシトンの電荷解離過程を検討する。時間依存密度汎関数計算により、ドナー・アクセプター分子複合体の電子励起状態を求め、D/A界面での電荷移動エキシトンの電子状態を解析し、電子―正孔距離を求める。また電子移動/励起エネルギー移動のカップリング計算、電荷移動型エキシトン状態の構造最適化と、振電相互作用の解析から、電子ポーラロン・正孔ポーラロン対形成の可能性、さらにフリーな電子ポーラロンと正孔ポーラロン形成のメカニズムの解析を行う。
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