2021 Fiscal Year Annual Research Report
Detection experiment of dark-matter-axion microwave emitted from superconductors
Publicly Offered Research
Project Area | What is dark matter? - Comprehensive study of the huge discovery space in dark matter |
Project/Area Number |
21H05446
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岸本 康宏 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (30374911)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / アクシオン |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導体表面または金属表面と平行に強力な磁場を印加した際,従来よりも非常に大きなアクシオン由来の信号が得られる,という指摘が源となって本研究がスタートした.本研究で,その理論的予言を精査した結果,その様な信号の増強メカニズムは存在しないことが分かった.これ自身は残念な結果であるが,それを論文としてまとめた. しかし,この原理に基づいた暗黒物質アクシオン探索は,アクシオン質量が比較的高い場合に非常に有効であることには変わりがない.この質量領域は,ADMXの様な共振空洞を利用することのできない質量領域,即ち,10 GHz程度を越えた質量領域に対応する.この質量領域のアクシオンを実験的に探索するため,本研究では,第一段階として,強力な永久磁石と金属板を組合わせた板を開発した.この板は,京都大学で開発された,暗黒物質暗黒光子探索のための実験装置,DOSUEに設置することを念頭に,ネオジム磁石を周期的に配置し,アクシオン信号を最も効率的に作る様に設計した.具体的には,DOSUEの窓の上に設置した際に,磁場の2乗 × 面積 が最大となる様に設計した.このマグネットでは,20㎜の間隔に,0.7 Tの磁場が生成される.このマグネットをDOSUEに設置し,来年度実験を行う予定で,準備を行った. さらに,国内では,核融合研に強力な大型マグネット(13T,直径700ミリ)が利用できることも判明し,これによって,暗黒物質アクシオンについて,興味あるパラメータ領域に迫ることができる.現在このプロジェクト実現に向けてコラボレーションの結成を目指して,意見交換等を行うことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁場中の超伝導体から非常に強力(1万倍以上)なアクシオン信号が発する,と言う指摘について,詳細な検討を行った結果,その様な信号の増大はないことを見いだした.結果自身は残念な方向であるが,理論の研究者との共同研究によりこの成果をまとめた. この結果の示すところは,信号の増大がないだけであり,従来通りの信号強度が得られるというものであり,特に共振空洞の利用が困難である質量領域(概ね10~20 GHzを超える質量領域)のアクシオン探索では,その有効性が再確認された. そのため,当初の計画の通り,質量の大きい領域に対し,実験的研究の具体化を進めた.具体的には,京都大学グループの実験装置,DOSUEを利用し,いち早く,20~30 GHzの範囲での探索を行う準備が整えることができた. さらに,この手法は,核融合研が所有する大型マグネットを利用できることが分かった.これを利用することで,感度を飛躍的に高め,興味あるパラメータ領域を探索する事が可能である.本研究により,そのプロジェクト実現に向けての準備をより具体的な形で進める事ができた. 本研究は学術変革領域「ダークマター」の公募研究であるが,上述の様に,この領域のテーマである,既存の施設の有効活用し,今までにない多角的な手法による暗黒物質へのアプローチを推進することができている.特に,核融合研の大型マグネットの利用は,今後大きなインパクトとなり得る. この理由から,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の早い段秋で,完成したマグネット板をDOSUEに取り付けて,予備的な実験を遂行する.DOSUEは,暗黒物質暗黒光子の探索で実績があるため,これにマグネット板を取り付けるだけで、感度には限界があるものの,実験を遂行することができる.マグネット板を用いた場合,検出器に到達する信号は10%程度に止まることが,シミュレーションで判明している.従って,これを向上することを検討する.具体的には,適切なホーンを設計する.この設計では,有限要素法によるシミュレーションを用いる.ホーンなどにより,最適化を行った後,本実験を行う予定である. これと並行して,感度の大きく向上する手法は強力な磁場を用いる事であるので,東北大RCNSの9Tマグネットなど,強力なソレノイド磁石を利用するシステム設計を行う.この場合,ソレノイドの軸方向と垂直に発する電磁波を,適切に集め,転送する系(ホーン・導波管)を検討する.そして,予備実験の結果,特にシステム雑音を反映し,実験計画の立案,感度見積等を行う. この実験では,アクシオン信号は,金属表面に平行に一様な同位相の単一周波数信号である.この特徴を活かして感度を向上させる検討を,マイクロ波の専門家,素粒子理論の研究者らと議論を行いながら進めたいと考えている.
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