2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive study of dynamical structures in the Galactic dwarf galaxies and shedding light on the nature of dark matter
Publicly Offered Research
Project Area | What is dark matter? - Comprehensive study of the huge discovery space in dark matter |
Project/Area Number |
21H05447
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
林 航平 一関工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (20771207)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 銀河系矮小銀河 / すばる望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダークマターは宇宙の構造形成を理解する上で重要な役割を担っているが、その正体は未だ謎のままである。現在ダークマターに対して様々なモデルが提唱されているが、いくつかのモデルではダークマター自身が持つ特有の性質によって、特に矮小銀河のような小スケールでのダークマター密度分布に大きな影響を与えることが予言されている。したがってダークマター密度分布を正確に知ることが、ダークマター正体解明への鍵となりうる。矮小銀河のダークマター密度分布を知るためには、その恒星の運動を用いた動力学解析を行う必要がある。しかし、観測データが不十分であること、簡単化された解析モデルが採用されていることから、観測から得られるダークマター密度分布の決定精度が低いことが問題視されている。 本研究では、まもなく観測が開始されるすばる望遠鏡超広視野多天体分光器(PFS)を見据えた、より高度な動力学解析モデルの構築を行い、ダークマター密度分布の高精度決定を目的とする。 本年度は、PFSで期待される高統計量データを活かした複数の動力学解析モデル構築を進めた。1つは恒星運動の統計的性質を記述した球対称ジーンズ方程式を用いて、恒星の速度分布の分散、尖度を求める解析モデルの構築を行った。尖度を求めることで、ダークマター密度分布決定を阻害していた速度分散の非等方性を示すパラメータを制限する狙いがある。このモデルを用いて、まずは現在得られている観測データに適用し、現在その解析を行っている。また、恒星軌道の重ね合わせから恒星分布や速度分布を表現するシュヴァルツシルト法の構築にも着手している。この手法はジーンズ解析に比べて、球対称などの仮定無しに高次統計量を計算できる。現在完成に向け研究を進めており、特にコード構築について、高速化を見据えた枠組みは確立されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の機関異動および、それに伴う業務内容の大幅な変更があり、研究計画当時の想定に対して研究時間が減少してしまったことが挙げられる。 また、研究実績の概要で述べたシュヴァルツシルト法の構築において、この手法は計算時間、計算資源を多く消費する。したがって、より高速化に向けたコードの改善が必要であり、その枠組みを再考するのに時間を要したことも理由の1つとして挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、 主にシュヴァルツシルト法のコード構築に焦点をあてて集中的に取り組んでいく。本年度に、この動力学解析モデルを効率的に計算するGPUマシンを購入したので、それに適したコード開発を進めていく。まずは球対称分布を仮定した場合のシュヴァルツシルト法を完成させ、実際の観測データにこのモデルを適用することで、構築したコードの整合性を確認する。そして、構築済みの球対称動力学解析モデル(例えば球対称ジーンズ解析)と結果を比較することで、モデル間の不定性がどの程度現れるのかを調べる。そして球対称モデルから、より一般的な軸対称モデルへの拡張を目指す。 一方、すばるPFSでの観測を考慮した模擬データを作成し、構築した動力学解析モデル(ジーンズ解析、シュヴァルツシルト法)を用いて模擬解析を行う。模擬データの生成に関しては、位置や速度の情報は分布関数と仮定したダークマターポテンシャルを用いて行う。恒星特有の情報(等級、色、金属量など)については、すばるPFSで観測予定の矮小銀河のデータを参考にランダムに振り分ける。本年度では、PFSターゲットの1つであるDraco矮小銀河に対して模擬データを作成している。今後は、その他の矮小銀河(BootesI, Ursa Minor, Sculptor, Sextans, Fornax)に対応した模擬データの生成、そして模擬解析を行う。これによって、モデル間の不定性を正しく理解したうえで、すばるPFSによって銀河系矮小銀河のダークマター分布の高精度決定が可能になることを定量的に示す。
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Research Products
(14 results)