2021 Fiscal Year Annual Research Report
重力波レーザー干渉計を用いた軽いダークマターの検証
Publicly Offered Research
Project Area | What is dark matter? - Comprehensive study of the huge discovery space in dark matter |
Project/Area Number |
21H05453
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20456198)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 軽いスカラー場 / ダークマター |
Outline of Annual Research Achievements |
標準模型の粒子とわずかに相互作用する非常に軽いダークマターを重力波レーザー干渉計のデータを用いて検出・制限するためのデータ解析法の定式化を行なった。特に、重力波レーザー干渉計に生じるシグナルの定式化を与えた。そのために、まず太陽系の場所におけるスカラー場ダークマターをランダムな振幅・位相を持つ様々な平面波モードの和として表し、そのようなスカラー場によって駆動されるレーザー干渉計を構成する鏡の微小なランダム運動の解析表式を求めた。次に、そのような鏡の運動に起因するレーザーの光路長の微小変化を求め、観測量であるシグナルを導出した。シグナルがランダム性を有することから、一台の干渉計のシグナルだけでは雑音と区別できない。この問題を回避するために、ランダム性を持つシグナルを捉える有効観測量として2台の検出器間によるcross-correlation statisticを導入し、それに対するシグナルの表式を得た。最後にそれを、実際の観測時間は有限である効果を取り入れて、より現実を反映する観測量の表式を導いた。また、ここまでの結果を当該学術変革のシンポジウムにて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに導いたcross-correlation statisticをLIGO HanfordとLivingstonの2台の検出器の場合に適用し、ダークマタースカラー場が存在する場合に期待されるcross-correlation statisticの具体的な周波数依存性を評価している段階である。特に、LVK collaborationによって公開されているcross-correlation statisticのデータには2点において焼き直しが必要である。1つ目は、公開データが背景重力波を想定したものであり、スカラー場による鏡の応答を反映したものにはなっていないことである。2つ目は、公開データのcross-correlation statisticはいくつかの周波数ビンにおいて平均したものだということである。1つ目については、これまでに行った定式化に基づいて、スカラー場の場合に適したようにデータを焼き直すことで解決でき、その焼き直しがほぼ出来上がっている。2つ目については、同様の平均操作を理論予測のcross-correlation statisticに対して行うことで解決でき、それを数値的に行う目途がついたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べたような課題を解決した後は、cross-correlation statisticを用いて、スカラー場と標準模型粒子との相互作用の大きさに対する尤度関数を導く。そして、ベイズ推定の方法によって、相互作用の大きさの事後分布を導出することで、データ解析のための準備を整える計画である。その後、LVK Collaborationによる公開データに適用し、定式化を行なった相互作用の大きさの事後分布を適用し、観測的に許される相互作用の大きさの範囲を様々なスカラー場の質量に対して求めていく。事後分布の数値的計算は、[2]で用いたコードに適宜変更を加えたものを用いて行ないます。これによって、標準模型粒子とわずかに相互作用する軽いスカラー場が存在するかどうかを明らかにし、検出されない場合は相互作用の大きさに上限を課す。
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