• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2021 Fiscal Year Annual Research Report

分子性固体中の電荷の非局在/局在性の定量化と分子内フォノンとの相互作用の解明

Publicly Offered Research

Project AreaCondensed Conjugation Molecular Physics and Chemistry: Revisiting "Electronic Conjugation" Leading to Innovative Physical Properties of Molecular Materials
Project/Area Number 21H05472
Research InstitutionChiba University

Principal Investigator

吉田 弘幸  千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (00283664)

Project Period (FY) 2021-09-10 – 2023-03-31
Keywords電荷の局在・非局在性 / 低エネルギー逆光電子分光 / ポーラロン / 有機半導体 / ボルン式
Outline of Annual Research Achievements

電子共役の概念と電荷の非局在/局在性は密接にかかわる。一方、分子性固体の電荷(電子・正孔)伝導では、電荷-フォノン相互作用が重要な役割を果たす。しかし、①電荷の非局在/局在性と②フォノンとの相互作用は、関係するはずなのに全く無視されている。これは、実験的には適切な測定法がなく、理論的には量子多体問題で困難なためである。本研究では、代表者が開発してきた低エネルギー逆光電子分光法(LEIPS)を駆使して、電荷の非局在/局在性と電荷-フォノン相互作用の問題に挑戦している。
①電荷の非局在/局在性については、移動度が高い=非局在性が期待されるペンタセン、移動度が低い=局在性が予想されるC60、銅フタロシアニンを取り上げ、電子分極エネルギーを精密測定した。ボルンの式から電荷の非局在半径を見積もったところ、すべての物質について1 nm程度と1分子の大きさになることが分かった。すなわち、電子分極から見積もられる電荷は1分子に局在化している。さらに、温度依存を測定したところ、ペンタセンでは低温で局在長が長く、C60と銅フタロシアニンでは局在長が短くなることが分かった。この実験結果を合理的に説明できるモデルの構築を進めている。
②ペンタセン薄膜について、HOMOとLUMOの両方のバンド幅の温度依存を精密測定し、電荷と分子内振動が結合したスモール・ポーラロンの存在を実験的に示した。これまで、高移動度有機半導体ではポーラロンの形成は確かめられておらず、大きな成果である。これに加えて、バンド幅の変化を定量的に説明する新たなポーラロン理論を構築し、partially-dressed polaronと名付けた。この新しいポーラロン理論により、バンド幅の温度依存性や移動度なども定量的に再現できることが分かってきた。
これらの成果は、当該領域で目指している電子共役と電子伝導の基本概念を再検討するものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

本研究では、二つの側面から、電子共役の概念を検討している。
①局在・非局在性について、ペンタセンのような高移動度有機半導体では、電荷は数分子に非局在化するという予想に反して、電子分極エネルギーとボルン式から見積もった電荷非局在長は1分子程度であることが分かった。この結果は、電子共役の概念の再検討を迫るものであり、理論の構築を急いでいる。理論モデルに決定的に重要な実験結果として、温度依存のデータも得られた。
②ポーラロン形成については、HOMOとLUMOの両方のバンド幅を精査してペンタセンでポーラロン形成を明確に示す実験結果がえられた。これまでの理論予測を覆す結果であり、これだけでも優れた研究成果である。それだけではなく、ポーラロン形成に関わる電荷の移動時間と分子の変形時間を取り込んだ新しいポーラロン理論を構築することができた。この理論では、今のところ、バンド幅や移動度などの実験値をすべて定量的に再現することに成功している。
以上のように、当初予想もしなかった実験結果が得られ、それにより新たな理論の構築までできたことから、計画以上の進展をしていると考えている。

Strategy for Future Research Activity

①局在・非局在性については、2021年度に得られた実験結果をさらに裏付けるため、同じ分子で局在性の薄膜と非局在性の薄膜を作り分け、同様の測定を行う。具体的には、ルブレンがアモルファスと結晶の薄膜を作り分けることができる。これについて、分極エネルギーの温度依存を精密に測定する。これと並行して、本研究と既報の実験事実のすべてを矛盾なく説明する理論モデルを構築する。
②新しいポーラロン理論の可能性と限界を徹底的に検証する。たとえば、ポーラロンが形成されると移動積分が小さくなる。2021年度はバンド幅を予測したが、2022年度は移動積分を直接比較することで、より厳密にポーラロン理論を検証する。このため、結晶方位の完全に揃った結晶性有機薄膜について、角度分解低エネルギー逆光電子分光によりバンド分散を測定し、強束縛近似に基づいて実験的に移動積分を決定する。この値の温度依存を新しいポーラロン理論と比較する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 2021

All Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results)

  • [Presentation] Localization/Delocalization of Charge Carrier in Organic Semiconductor via Temperature Dependent-Electronic Polarization Energy2022

    • Author(s)
      Abdullah Syed、Hiroyuki Yoshida
    • Organizer
      第82回応用物理学会秋季学術講演会
  • [Presentation] 有機半導体のHOMO/LUMO準位バンド幅の温度依存測定によるスモールポーラロン形成の実証2022

    • Author(s)
      山田 陽太、Syed Abdulah Bin Syed Ab Raman、佐藤 晴輝、石井 宏幸、吉田 弘幸
    • Organizer
      第82回応用物理学会秋季学術講演会
  • [Presentation] 有機半導体における電子と正孔の移動度の差とその微視的起源2021

    • Author(s)
      石井 宏幸、吉田 弘幸、小林 伸彦
    • Organizer
      第69回応用物理学会春季学術講演会
  • [Presentation] Evidence of Polaron Formation in Organic Semiconductor Proved by Temperature-Dependent HOMO/LUMO bandwidths2021

    • Author(s)
      Syed A. Ab Rahman, Yota Yamada, Haruki Sato, Hiroyuki Ishii, and Hiroyuki Yoshida
    • Organizer
      The 9th International Symposium on Surface Science (ISSS-9)
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] Evidence of Small Polaron Formation in Organic Semiconductor from Temperature-Dependent HOMO/LUMO Bandwidth(Poster)2021

    • Author(s)
      Syed A. Abd Rahman, Yota Yamada, Haruki Sato, Hiroyuki Ishii, Hiroyuki Yoshida
    • Organizer
      ASOMEA-X
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2022-12-28  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi