2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Boron-Containing Liquid-Crystalline Semiconducting Elastomers and Mechanical Control of Their Charge Transport
Publicly Offered Research
Project Area | Condensed Conjugation Molecular Physics and Chemistry: Revisiting "Electronic Conjugation" Leading to Innovative Physical Properties of Molecular Materials |
Project/Area Number |
21H05500
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
吉尾 正史 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (60345098)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 液晶性半導体 / エラストマー / カラムナー液晶 / ホウ素 / 電荷移動度 / 力学延伸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ホウ素原子を含有する平面π電子系液晶のその場光重合による高密度共役の固定化および高分子エラストマーの力学延伸によるホウ素の空軌道の近接化と高速キャリア輸送の実現を目的とする。本年度は、トリアリールボラン骨格の二箇所を酸素架橋した平面共役分子を基幹構造とし、分子自己組織化を促す長鎖アルキル基を導入したフェニル基、フェニルエチニル基、ベンゾエート基などをパラジウム触媒カップリング反応により導入した。これらの平面共役分子において、ディスク状の共役平面の積層によって室温でカラムナー液晶相を発現させることに成功した。一般的にホウ素原子を導入した共役分子は、大気下で不安定であるが、平面固定化することで化学的に安定な物質となることを見出した。飛行時間法により電荷移動度の計測を行った結果、10-5 cm2V-1s-1程度のホール移動度が得られた。ホウ素原子のルイス酸性に着目して、様々な塩基性分子とのイオン対形成を行った。例えば、二塩基性のジアザビシクロオクタンとのダンベル型構造の錯形成では、液晶相-液体相転移温度が低下した。導入する塩基の種類によって、液晶相形成温度を調節できることを実証した。一方、光重合性基を導入したトリアリールボラン誘導体の合成においては、凝集状態で架橋反応が進行したため、モノマー状態の液晶性を評価することができていないが、液晶秩序構造を有する重合体の力学延伸によって動的な配向変化が起こることを確認した。精密な力学延伸を実現するために、高分子フィルムを2軸で延伸できる装置を独自に開発した。フィルム延伸率が分子集積構造および電荷移動度に及ぼす効果を明らかにするためにX線回折実験および光キャリア飛行時間測定を可能とする伸縮性電極の作製について検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に従って、ホウ素含有平面π電子系液晶の開発を進め、室温でカラムナー液晶相を発現する分子群を創出することができた。しかしながら、ペリレンビスイミドなどの従来系のπ電子系液晶と比較して、電荷移動度を向上させるには至っていない。この結果は、π電子平面の拡張が不十分であることに起因すると考えられ、分子平面性を維持しながら共役を伸ばす新たな設計が必要である。一方、半導体液晶への重合基導入によってエラストマー化する研究に関しては、均一配向させた液晶モノマー状態での光架橋を目指しているが、分子の高い凝集性によって予期せぬ架橋反応が進行する問題が生じている。本年度は主に重合性基としてアクリレート基の導入を行ったが、熱重合が起こりにくいジエン基などの不飽和炭化水素基の導入を検討する予定である。高分子フィルムの延伸度に応じた電荷移動度測定のための延伸治具の作製に成功しているため、配向させた液晶半導体エラストマーを得ることができれば、研究の加速が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平面固定化ホウ素液晶分子の合成法を確立できており、分子構造および重合基の適切な選択によって目的とする液晶性半導体エラストマーを実現できると考えられる。次年度はアルキル鎖末端にジエン基およびビニル基を導入したトリアリールボラン誘導体の合成を行い、光重合およびグラブス触媒を用いた液晶場での架橋反応により半導体エラストマーの作製に挑戦する。また、分子平面性を維持したままπ電子共役を拡張させたジボリルアントラセン誘導体やテトラボリルコロネン誘導体の開発を進める予定である。さらに、当初の計画に従って、シクロファン構造を有するホウ素含有液晶性半導体に基づく高分子エラストマーの開発を推進し、いままでに誰も実現していない高密度π集積構造および電荷輸送のメカニカル制御を達成する。これにより、ロボット用ソフト触覚センサーなどへの応用につなげる。
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Research Products
(3 results)