2021 Fiscal Year Annual Research Report
Protection of biomolecules via molecular shielding effect
Publicly Offered Research
Project Area | Biophysical Chemistry for Material Symbiosis |
Project/Area Number |
21H05516
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松村 和明 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00432328)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | Molecular Shielding / 保護作用 / 弱い相互作用 / 両性電解質高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
両性電解質高分子を中心とした、生体物質の保護・保存に寄与する高分子の研究を進めている。例えば凍結保護効果のある両性電解質高分子は、細胞の脱水制御を行っている事を報告したが、解凍時の復水に伴う膜破壊などに対する膜ダメージの低減効果についてはまだ考察されていない。同じような両性電解質高分子によるタンパク質凝集抑制効果の機序として、タンパク質同士の乾燥による不可逆的結合を物理的に妨げるようにタンパク質間に入り込むというモデルがある。我々の系ではタンパク質の熱凝集を双性イオンポリマーであるポリスルホベタイン(PplySPB)が抑制することを確認し、さらに疎水性部位の導入により効果の向上を報告した。そのような知見を元に、複数の高分子を合成し、疎水性部位とタンパク質の疎水性残基との弱い可逆的な相互作用がタンパク質同士の強い不可逆な凝集を防ぐというMolecular Shielding効果に関して、定量的データの集積を試みた。具体的には、SPBと疎水性残基であるブチルメタクリレートを共重合させた疎水性PolyPSPBにおいてタンパク質との相互作用がどのように変化するかを等温滴定型カロリメトリー(ITC)により評価した。ITCは熱分析の一種であり、溶液を混合した時に起こる発熱や吸熱を検知することで分子間の相互作用を定量化する手法であるが、非常に感度が高い分、測定に影響する溶解熱や中和熱、会合体の分散熱などを注意深く除去する必要がある。今回はその結果、相互作用が小さいため、定量的な解離定数などを求めることは不可能であった。ただし、定性的に疎水性部位を導入したPolySPBの方がタンパク質との相互作用は高いことを確認した、これは別途行ったMDシミュレーションにおいても弱い相互作用が確認され、Molecular Shielding効果が期待出来る結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
等温滴定型カロリメトリー(ITC)は分子科学研究所にある装置を共同利用している。新型コロナの影響で2021年のまん延防止重点措置の期間は出張が原則禁止であったため、満足な測定が出来なかった。ITCにより定性的には疎水性部位を導入することで相互作用が高くなることは確認できたが、相互作用が非常に小さいため、また抗原抗体反応のような1対1の反応であるかも不明な状態であるため、定量的に解離定数を算出することが困難であることが分かってきた。そこで、班員との共同研究を提案し、Pulsed Field Gradient (PFG) NMRにより拡散係数の変化から相互作用を定量するという方向性も今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
等温滴定型カロリメトリーだけでは定量的な議論が困難であることが分かった。今後は、班員との共同研究により、Pulsed Field Gradient (PFG) NMRの手法を用いて高分子と膜脂質、もしくは高分子とタンパク質の相互作用を拡散係数の変化から定量的に取り扱えるかを検討する。また、表面プラズモン共鳴の手法も検討し、分子間の弱い相互作用を定量的に解析できるかに挑戦する。このような弱い相互作用の定量化がある程度可能となれば、細胞膜やタンパク質と可逆的に相互作用できる分子構造をデザインすることが可能となる。つまり、凍結保護、凝集抑制、タンパク医薬品の生成、生体組織の保存、移植など、様々な場面で活用可能なMolecular Shieldingとして分子を保護する高分子の設計につながる基礎研究を行う。
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Research Products
(6 results)