2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト生細胞中における核酸の構造と相互作用を解析するインセルNMR法の開発と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Biophysical Chemistry for Material Symbiosis |
Project/Area Number |
21H05519
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片平 正人 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | インセルNMR / 核酸構造 / ダイナミクス / 細胞内混雑条件 / 非標準型構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト生細胞に導入した核酸分子に関し、塩基のイミノプロトンと水分子との化学交換の速度定数kexを決定した。一方同じ核酸分子の試験管内希薄溶液条件下におけるkexも決定した。その結果、多くの核酸分子において、生細胞内におけるkexは試験管内希薄溶液条件下におけるkexよりも大きな値を示す事を見出した。これは、生細胞中の方が試験管内希薄溶液条件下におけるよりも、塩基対が開く頻度が高い事を強く示唆している。 この原因を同定する為に、細胞内の環境を疑似的に再現する各種化合物を添加した溶液を調製し、これらの溶液中における核酸分子のkexの測定を行った。その結果、細胞内における排除体積効果、水の活性の低下及び粘土の上昇を疑似的に再現する化合物を加えても、kexの値はほとんど変化しない事が分かった。一方、タンパク質との非特異的な相互作用を疑似的に再現する物質を加えると、kexの値が上昇する事が分かった。即ち生細胞内においては、核酸分子とタンパク質分子の非特異的な相互作用によって、塩基対が開く頻度が上昇している事が示唆された。塩基対が開く頻度の細胞内における上昇は、特異的なタンパク質による特定の塩基の認識に役立っている可能性がある。 kexの値の解析に基づいて、塩基対が開く速度定数kopenに関する情報を得る方法論の開発も進めた。これによって、塩基対が開く頻度が高まったのが、kopenの上昇によるのか、それとも塩基対が閉じる速度定数kcloseの低下によるのかを区別できる可能性も出てきた。 また、インセルNMR法によって、生細胞内において3重鎖核酸構造が形成される事を初めて直接的に実証する事にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生細胞中においては、試験管内希薄溶液条件下に比べて、核酸分子の塩基対が開く頻度が高い事を、インセルNMR法によって見出した。また、その原因がタンパク質との非特異的な相互作用である事を示唆する結果も得た。さらに、3重鎖核酸構造が生細胞内において形成される事を、初めて直接的に示す事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
インセルNMR法を駆使する事で、生細胞内における核酸分子の構造、ダイナミクス及び相互作用に関する情報を直接的に得る研究を、今後も推進していく。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Analysis of structure and dynamics of oligonucleotides in intracellular conditions2021
Author(s)
Nagata, T., Yamaoki, Y., Sakamoto, T., Kondo, K., Takami, S. and Katahira, M.
Organizer
22nd International Society of Magnetic Resonance Conference
Int'l Joint Research / Invited
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