2021 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of integrated theory for symbiosis of non-viral vectors using lipids
Publicly Offered Research
Project Area | Biophysical Chemistry for Material Symbiosis |
Project/Area Number |
21H05533
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
麓 伸太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (70380988)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝子・核酸工学材料 / 脂質DDS / 遺伝子導入機構 / 遺伝子デリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
生体に投与した物質の機能を永く生かすことが物質共生である。遺伝子治療に用いるアデノ随伴ウイルスベクターは共生の良い例だが、医療経済的な問題や中和抗体の問題がある。遺伝子治療の普及の観点から、持続的な遺伝子発現を可能とする非ウイルスベクターの開発が望まれる。 本研究では、非ウイルスベクターによる遺伝子発現を長期化し、非ウイルスベクターが生体内で共生できることを目指す。これまでに、カチオン性リポソーム・プラスミドDNA複合体(リポプレックス)調製時のリポソームのブラウン運動パラメータ(拡散係数の平方根の逆数)がマウス肺における遺伝子発現と相関することを見出した。また、抗酸化剤エダラボンを投与し続けることで、投与後数日間における遺伝子発現の低下を大きく抑制できることを見出した。 2021年度は、カチオン性リポソーム・プラスミドDNA複合体(リポプレックス)を用いて、ブラウン運動と酸化ストレスおよびオートファジーの関連性解析系を立ち上げた。また、種々の酸化ストレス阻害剤を用いて、解析を行った。結果を考察したところ、新たに酸化ストレス中庸仮説、すなわち適度な酸化ストレスにより適度にオートファジーを活性化することで遺伝子発現に有利に働くとの仮説を立てることができた。 そこで、これまでの解析結果に基づき、リポプレックスあるいは脂質ナノ粒子(LNP)のブラウン運動と、血清成分との相互作用、酸化ストレス、自然免疫およびオートファジーの惹起を繋ぎうる統合理論の構築を目指し、解析を進めている。さらに、抗酸化剤を物質共生補助剤と位置づけ、最適な抗酸化剤をスクリーニングし、フラボノイドの一種であるケルセチンにより、エダラボンよりも高い遺伝子発現増強効果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微量粘度計の納入が遅れ、ブラウン運動パラメータの測定が滞ったものの、その代わりにフラボノイドのスクリーニングを行い、物質共生補助剤として有望な化合物の同定が進んだ。物質共生補助剤のIn vivoへの適用を目指し、同定した化合物を長期徐放可能なPLGAマイクロスフェアの開発にも成功している。なお、PLGAマイクロスフェアの調製法には塩化メチレンを使わず環境負荷に配慮した方法を採用している。 また、研究実績の概要欄にも記載したように、遺伝子導入機構の解析により、新たに酸化ストレス中庸仮説を立てることができた。従って、2年目において、ブラウン運動と、酸化ストレス、オートファジー、炎症反応などの生体反応を繋ぐ統合理論の構築に成功する可能性は高い。
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Strategy for Future Research Activity |
微量粘度計が納入されたので、ブラウン運動パラメータと遺伝子導入、酸化ストレス、オートファジーおよび炎症反応の関連性を解析していく。また、新たにcorrelative twice light microscopyを利用した超多色相関観察により、遺伝子発現(TagBFP)、オートファジー(DalGreen)、酸化ストレス(CellROX Orange)、リポプレックスまたはLNPを一度観察し、遺伝子発現以外の色を脱色して、抗体染色により炎症性転写因子NFκBと抗炎症性転写因子NRF2の核移行を再度観察することでそれぞれの位置関係を解析する。この実験系を用いて、ブラウン運動の役割を解析する。 また、血清成分の関連を解析するため、FRETを利用した解離定数測定法を確立する。これまでに血清成分フィブロネクチンが初回通過組織における遺伝子発現に寄与することを明らかにしており、ブラウン運動によりフィブロネクチンとの解離定数が変わり得るかどうかを解析する。評価系として、現在のところ培養細胞においてブラウン運動の役割が解析しにくい結果が得られている。これは血清不含培地の使用により、リポプレックスを細胞に滴下した際に粒子径が一様に増大していることに起因すると考えている。そこで血清を含む培地を用いて培養細胞でブラウン運動の役割が解析できないか検討する。もしできなければ、マウス実験により解析を行う。 さらに、物質共生補助剤として有望な化合物を搭載したPLGAマイクロスフェアの併用による、脂質を用いた遺伝子導入ベクターの遺伝子発現長期化について、実験動物(マウス)レベルにおいて実証していく。
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Research Products
(3 results)