2021 Fiscal Year Annual Research Report
環状ネットワーク侵入型発光中心と原子空孔のマルチプローブ分光
Publicly Offered Research
Project Area | Progressive condensed matter physics inspired by hyper-ordered structures |
Project/Area Number |
21H05546
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北浦 守 山形大学, 理学部, 教授 (60300571)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 環状ネットワーク / 侵入型ドーパント / 蛍光体 / 乱れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環状ネットワーク中に侵入したドーパントの局所構造とドーパントが安定化する際に必要不可欠な原子空孔の存在を、量子ビームを利用した原子レベルのプローブ技術を駆使して解き明かし、侵入型ドーパントの安定化機構に原子空孔がどのような役割を果たすかを明らかにするのが目的である。そこで、β-サイアロン蛍光体を対象試料として研究をおこなっている。今年度は次のような成果を得ることができた。 (1) 微小領域X線ホログラフィーに代わってX線吸収微細構造(XAFS)を行い、β-サイアロン蛍光体におけるユーロピウムの価数とサイト構造に関する知見を得ることができた。この成果をもとに試料の最適化を行うことができた。 (2) GiPALSの結果、βサイアロンには潜在的にカチオン原子空孔が存在することを見出した。また、電子スピン共鳴の結果からアニオン空孔も存在することをみいだし、ユーロピウムをドープすることでアニオン空孔が抑制されることを明らかにした。さらに核磁気共鳴(NMR)によってβサイアロンには未反応領域が存在し、ユーロピウムドープで消失することも見出した。 以上のことから、環状ネットワーク中の侵入型ドーパントには、電荷補償によって母体欠陥を安定化させる働きがあることを見出した。今後は、ユーロピウムの局所構造だけでなく、母体欠陥を生じさせるアルミニウムと酸素の局所構造を解き明かし、これらが誘起する構造的な乱れによって実現する侵入型ドーパント(超秩序構造)の安定化機構と発光特性の相関を環状ネットワーク構造因子に注目して調べたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度にはユーロピウムの局所構造を特定することを考えていたが、微小領域蛍光X線ホログラフィーの目処が立たず、急遽XAFSに切り替えて予備実験を行ったため、その本実験を次年度に行うことになった。また、ガンマ線陽電子消滅寿命分光の実験機会も十分に確保できなかったため、全体のスケジュールが遅れてしまい、十分な統計精度を確保できていない。こうした不足の事態はあったが、領域研究者とのインタラクションを通じて研究計画を見直す機会になり、電子スピン共鳴や核磁気共鳴など当初は想定していない実験を行う契機となり、学術変革の芽も見出すことができ、思いのほか研究全体がいい方向に向かって順調に進行している。また、これまで注目していなかった乱れをネットワーク構造因子から見つめる機会にも気づくことができた。公募研究を通じて領域全体にも一定の寄与があることから概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はユーロピウムの局所構造を極低温高エネルギーXAFS実験から解き明かす。そのための実験機会をSPring8に確保している。また、ガンマ線陽電子消滅分光の実験機会を十分に確保するために他の機関での利用を検討している。さらに、ネットワーク構造因子を抽出するために、磁気共鳴だけでなく軟X線発光分光もおこなうべくSpring8やPFへの課題申請準備をおこなっている。公募研究と並行して、ガーネットガラスでの優先占有サイトの存在、結晶とガラスにおける陽電子消滅サイトの実態解明、半導体表面の電子状態解析など領域研究者との連携も積極的におこなっていく。
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Research Products
(4 results)