2021 Fiscal Year Annual Research Report
Analyses of hyper-ordered structures in next-generation electronic devices by using machine-learning potentials
Publicly Offered Research
Project Area | Progressive condensed matter physics inspired by hyper-ordered structures |
Project/Area Number |
21H05552
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 聡 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00292772)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 機械学習 / 原子間ポテンシャル / 超秩序構造 / 第一原理計算 / イオン移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代電子素子ではナノフィラメント等の超秩序構造が動作の鍵を握っているが、その原子レベルの詳細の解明は第一原理計算でも難しい。そこで本研究では、①このような解明に十分な精度の機械学習原子間ポテンシャルの開発、②作成した機械学習ポテンシャルを用いた、超秩序構造の原子構造とダイナミクス、およびその物性値との相関の解明、③素子動作で重要な電場印加を考慮できるポテンシャルの開発と、これを用いた電場印加の影響の解明、の3点を目的として研究を進めた。機械学習ポテンシャルとしては高次元ニューラルネットワークポテンシャル(HDNNP)を用いている。 本年度は、まずアモルファス酸化タンタル中の銅イオンの拡散挙動を解析した。水分を含む場合にも適用可能なHDNNPを作成し、これを用いた分子動力学(MD)計算により、大きな空隙が無くても水分含有が銅拡散を促進することを見出した。また、1000KでのMD計算で2ps中に拡散が起きたケースと起きなかったケースとで銅周辺局所構造に有意な違いがあることを見出した。 次に印加電場を考慮する機械学習ポテンシャル高度化について、小さなアモルファスリン酸リチウムモデル(最大61原子/セル)で機械学習したニューラルネットワークを用いて大きなモデル(125原子/セル)のボルン有効電荷を良好な精度で予測できることを確認した。そして大きなモデルで電場印加下のMD計算を行い、電場印加方向の銅イオン移動の大幅な促進と、ボルン有効電荷の非対角成分が非ゼロということを反映した電場以外の方向の移動の若干の促進を確認した。 以上の他、硫化タングステン薄膜構造の解析のための機械学習ポテンシャル作成の準備を進めた。また、4元素以上を含む多元系に対する適用を念頭に、HDNNP以外のいくつかのニューラルネットワークポテンシャルの予測性能の評価と改良も試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に掲げた計画を下記のようにおおむね達成できたことから順調に進展していると判断した。 まず、超秩序構造を高精度に記述できるHDNNPについては、銅と水分を含むアモルファス酸化タンタルに対して十分な予測精度のHDNNPを作成できた。次に、HDNNPを用いた学術変革領域内での共同研究の立ち上げについて、硫化タングステン薄膜の構造解析をターゲットとする共同研究を立ち上げることができ、HDNNP作成のための第一原理計算データの蓄積が進んだ。また、多元素系に対するHDNNP作成法についても、先行研究で提案されている方法の評価を進め、有望な方法を特定することができた。 作成したHDNNPを用いた解析については、アモルファス酸化タンタル中の銅イオン移動挙動の解析について、学術変革領域内での共同研究で検討を進めることができた。また、窒化ガリウムの点欠陥におけるフォノンの振舞いについても、HDNNPの方法の高度化を行った上で欠陥の荷電状態の違いが及ぼす影響を含めて解析を進めることができた。 最後にイオンに働く力の印加電場に応じた変化を考慮したHDNNPについても、小さなモデルで学習したものを大きなモデルに適用できることを確認し、電場印加下の銅含有アモルファス酸化タンタルの分子動力学計算に適用し、妥当な結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、これまで取り組んできた全結合型ニューラルネットワーク(NN)と異なる畳み込みNNを用いたポテンシャルの性能について有望な結果を得たことから、この方法についてさらに評価を進め、高性能な方法を見極める。また、汎用的な作成法の確立につなげるため、データサンプリング法の改良についても特に多元素系を念頭に一層注力する。 次に、アモルファス酸化タンタル中の銅イオン移動挙動等を主な対象とした解析については、領域内の共同研究を引き続き進め、移動挙動と水分の有無およびアモルファスの構造的特徴との相関を明かにする。得られた知見・経験を基に、金-リン酸リチウム界面近傍でのリチウムイオンの挙動、窒化ガリウムをはじめとする窒化物半導体やそのヘテロ構造における点欠陥の振舞いについても解析する。 硫化タングステン薄膜の構造解析については、HDNNPを作成し、それを用いた解析を進めていく。WS2薄膜の原子構造、特に欠陥の密度やその構造の解析を進め、さらには欠陥の物性への影響を解析する。 イオンに働く力の印加電場に応じた変化を考慮したHDNNPの開発については、開発した手法を用いて本格的な分子動力学計算を進め、その結果の解析を進める。超秩序構造の荷電状態を考慮したHDNNPの開発についても、窒化ガリウム以外の系にも適用し、解析を進める。
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