2021 Fiscal Year Annual Research Report
層状ペロブスカイトの層間侵入アニオンが形成する超秩序構造の解明と電気的秩序の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Progressive condensed matter physics inspired by hyper-ordered structures |
Project/Area Number |
21H05568
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤松 寛文 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10776537)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 超秩序構造 / 層状ペロブスカイト / 第一原理計算 / 強誘電体 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶構造は物性と深く関連しているため、構造歪みの制御は物性の創出や制御のために不可欠である。ペロブスカイト関連化合物においてよく見られる配位八面体の回転は、許容因子に基づいて、カチオンの置換により制御されることが多いが、アニオンの置換や挿入による制御はほとんど報告されていない。最近、層状ペロブスカイト酸化物の層間サイトへのフッ化物イオンの挿入により、八面体の回転パターンが変化することが第一原理計算により予測された。 本研究では、Ruddlesden-Popper相NaRTiO4(R: 希土類)に注目する。NaLaTiO4では配位八面体は回転していないが、LaをSmなどの小さな希土類で置換すると、配位八面体が回転した結晶構造が安定となることが報告されている。そこで、異種アニオン導入による配位八面体回転制御の可能性を検討するため、フッ素含有ポリマーを用いた低温トポケミカル反応により、NaRTiO4へフッ素を導入し、その試料の詳細な結晶構造解析を行う。特に、フッ素により生じるペロブスカイト層間の超秩序構造が、配位八面体の回転に与える影響を明らかにする。 本年度はNaLaTiO4のフッ素導入体を合成し、粉末放射光XRD回折測定およびそのパターンに対するRietveld解析により構造精密化を行った。その結果、フッ素の導入により配位八面体回転が誘起されることを実証できた。また、フッ素導入のために用いるpolytetrafluoroethyleneの仕込み量が生成物の構成相に与える影響を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NaLaTiO4およびpolytetrafluoroethyleneを混合、熱処理することにより、フッ素導入体試料を得た。SPring-8のBL02B2においてフッ素導入体試料の粉末XRDパターンを測定し、Rietveld解析による構造精密化を行った。その結果、NaLaTiO4のフッ素導入体においては、LaO層にF-が挿入され、TiO6八面体のアピカル位置のO2-がF-に置換され、組成はNaLaTiO3F2となっていることが明らかになった。これにより格子定数が面内方向に2.1 %、面外方向に3.6 % 増加するとともに、アニオン配位八面体回転により、その構造の空間群はP-421mであることが明らかになった。このように、NaLaTiO4のフッ素導入体の結晶構造の精密解析を行うことにより、フッ素の導入により配位八面体回転が誘起されることを実証した。 また、polytetrafluoroethyleneの仕込み量を変えて合成を行ったところ、生成物はフッ素含有相と母相NaLaTiO4の混合相となることが明らかになった。この実験により、polytetrafluoroethyleneの仕込み量を最適化することができた。 以上のように、本研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の成果から、最適なpolytetrafluoroethyleneの仕込み量およびNaLaTiO4のフッ素導入体の結晶構造を明らかにすることができた。この結果にしたがって、2022年度は他の希土類R(R = Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Y, Ho)のNaRTiO4試料を合成し、それらにフッ素導入行う予定である。SPring-8のBL02B2での放射光XRD回折測定およびRietveld解析により精密結晶構造解析を行う。また、光第二高調波による中心対称性の有無の確認、組成評価などのキャラクタリゼーションを行う。 また、NaLaTiO4エピタキシャル薄膜の合成にも着手する。パルスレーザー堆積法により薄膜試料を合成し、薄膜試料を利用した局所構造解析を行いたいと考えている。
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