2021 Fiscal Year Annual Research Report
Search for host-guest co-crystal and co-amorphous structures of polymers
Publicly Offered Research
Project Area | Progressive condensed matter physics inspired by hyper-ordered structures |
Project/Area Number |
21H05574
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
千葉 文野 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20424195)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | ホスト-ゲスト構造 / 分子吸蔵 / 結晶性高分子 / 液体分離 / リバースモンテカルロ法 / 中性子回折 / X線回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子isotactic poly(4-methyl-1-pentene) (P4MP1)のフィルムが各種有機溶媒を吸収することを我々は2019年に見出したが、このホスト-ゲスト複合体がどのような構造になっているのかを解明することを本研究では一つの目標としている。X線回折・中性子回折測定により、ホスト-ゲスト共構造を明らかにすべく本研究の1年目には、2021年12月にSPring-8のBL40B2にてX線小角および広角の回折測定を行った。金沢大学の比江嶋准教授らにご協力をいただき、配向させて結晶化度を上げたP4MP1フィルムを入手し、吸蔵前後の回折パターンの変化を2次元で計測することができた。 また、このように結晶化度を変化させた試料について赤外分光法により吸蔵されるアルカンの量を計測したところ、結晶化度の低い試料の方が吸蔵量が多いことが分かった。これは通常の高分子と同様の振る舞いであるが、P4MP1は結晶の密度よりも非晶の密度の方が若干大きいことから、どちらの領域に優先的に吸蔵されるのかは興味の持たれる所であった。非晶域には大小の空隙が混在すると考えられ、その結果非晶域に優先的に吸蔵されるものと考えられる。ゲスト分子が非小域に優先的に吸蔵された結果、X線回折においては、吸蔵に伴って小角域にラメラ長周期ピークが生じること、脱離に伴い当該ピークが消失することも見出し、これらの結果をまとめて論文を投稿した。 ホスト分子がP4MP1である場合の他に、カーボンナノチューブ(CNT)である場合についても計測を進め、P4MP1と同様の振る舞い(長鎖選択的吸蔵等)を観測した。CNTは空隙の径を制御できるだけでなく、リバースモンテカルロ法(RMC)に取り組むにあたり構造が単純なので適すると考え、2021年10月より、ゲストに重水素化試薬を用いた中性子回折実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高分子P4MP1およびCNTへのアルカンの吸蔵に伴う構造変化を、2021年12月にSPring-8のBL40B2にて、また、2021年10月にJRR-3のSANS-Uにて、X線小角・広角測定および中性子小角散乱測定によって捉えることができ、2022年3月に論文を投稿することができた。ホスト分子をP4MP1とした場合のX線回折について具体的に記述すると、小角散乱域において、アルカンの吸蔵に伴い小角域にピークが出現し、脱離に伴い、当該ピークが無くなる様子を時分割計測できた他、広角域においても、主鎖間の距離の逆数に相当する100ピークが、アルカン吸蔵に伴い低角側にシフトし、ピーク形状も顕著に尖鋭化することを確認した。 また、結晶化度を変化させたP4MP1へのアルカン吸蔵量を赤外分光法によって計測し、非晶域への吸蔵が結晶域への吸蔵よりも主となっている結果を得た。これらの結果から、これまで明らかでなかったP4MP1のアルカン吸蔵について、非晶域により多くのアルカンが吸蔵されるとみられることや、結晶域にもいくらか吸蔵されている可能性があることが示唆されたので、以上の結論をまとめ論文を投稿することができた。 ソフトウェアGromacsを用いた分子動力学シミュレーションにも着手した。RMCについては、1年目にソフトウェアRMC Profileを研究室内のワークステーション上で利用できる状態にできたので、以下に記述のように2年目以降に実験結果から構造を描画する準備が整ってきたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
以上に記述のように、ホストをP4MP1とした場合、低分子が非晶域に優先的に入ることによって、ホスト‐ゲストの共アモルファス構造と呼ぶべきものが生じていることが示唆される。このようなホスト-ゲスト共アモルファス構造をRMCを用いて描画することを目指したいが、ホストが高分子であると構造が複雑で、最初にRMCで取り組む対象としては最適ではないと考えられる。そこで2年目は、ホストをカーボンナノチューブ(CNT)とした場合について、RMCによって構造を得ることを目指し、2022年5月に中性子散乱測定(JRR-3のSANS-UおよびHERMES)、2022年6月にX線回折測定(SPring-8のBL04B2)を計画している。また、Gromacsを用いた分子シミュレーションにより、CNT+アルカン系については3次元の原子配置の例をいくつか得ることができているので、これらの結果をRMCの初期条件として用い、重水素化試薬を用いてコントラストを調整した中性子回折とX線回折結果から、3次元構造を得ることを目指す。まずは、ゲスト分子をヘキサンとした場合について調べる計画である。 更に、膜内におけるダイナミクス、特にゲスト分子の拡散係数について中性子準弾性、非弾性散乱実験で調べたく、まずは装置の選定等を行う予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] パイエルス歪を伴う液体の非弾性励起エネルギー2021
Author(s)
乾雅祝, 梶原行夫, 細川伸也, 千葉文野, 中島陽一, 松田和博, ステルホーン・イエンツ, 萩谷透, 石川大介, 内山裕士, 筒井智嗣, バロン・アルフレッド
Organizer
日本物理学会2021年秋季大会