2021 Fiscal Year Annual Research Report
脳内炎症による血圧制御中枢の活性化メカニズムの解析
Publicly Offered Research
Project Area | Glia decoding: deciphering information critical for brain-body interactions |
Project/Area Number |
21H05615
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松田 隆志 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (90803065)
|
Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
Keywords | 感覚性脳室周囲器官 / 高血圧 / 肥満 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、感覚性脳室周囲器官(sCVOs)に属する脳弓下器官(SFO)や終板脈管器官(OVLT)においてミクログリアのマーカー分子であるIba-1の陽性細胞が常在しており、高血圧誘導時においてIba-1のシグナルが有意に増加することを確認していた。本年度では、ミクログリアの活性化マーカーであるMHCIIの免疫染色によって、アンジオテンシンII(AngII)の慢性投与や肥満、塩分の過剰摂取時において、SFOやOVLTのミクログリアが活性化していることを確認した。さらに、神経細胞活性化マーカーであるFosの染色により、炎症誘導時のSFOあるいはOVLTにおいて神経細胞が活性化していることを明らかにした。一方で、ミクログリアの活性化を抑制するミノサイクリンの投与により、ミクログリアの活性化と血圧が相関して低下することが分かった。 活性化したミクログリアはTNF-αやIL-1βなどのサイトカインや一酸化窒素(NO)、活性酸素種(ROS)などを介して神経細胞の活動を制御することが推定されている。そこで、脳室内にTNF-αやIL-1βをそれぞれ投与したところ、有意に血圧上昇が認められた。また、SFOおよびOVLTにおいてFosの免疫応答が増加していた。 sCVOsのミクログリアの活動が血圧制御に直接的に影響するのか明らかにするため、ミクログリアの活動を人為的に制御あるいは観察する手法の開発を進めている。本年度においては、ミクログリアのマーカー分子として用いられるCX3CR1の発現細胞内にCreリコンビナーゼを発現するマウス(CX3CR1-Creマウス)のSFOおよびOVLTにCre依存的に蛍光タンパク質を発現させるレンチウイルスベクターを投与した。これにより、一定期間の間、SFOおよびOVLTのミクログリアに遺伝子導入することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血圧上昇を伴う高血圧症や肥満症において、脳内で炎症が生じていることが古くから認められていたが、近年、この脳内炎症が疾患の結果ではなく、原因である可能性が示唆されている。これまでの研究成果から、sCVOsのミクログリアが高血圧誘導時において炎症反応を示しており、これがニューロンの活動を制御することで、血圧が調節されていることを示唆するデータが得られている。また、sCVOsのミクログリアの活動を薬理学的および化学遺伝学的手法、in vivo イメージング法などを用いて直接的に制御・観察する手法の確立が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、sCVOsのミクログリアの活動が血圧制御に直接的に影響するのか明らかにするため、ミクログリアの活動を人為的に制御する手法の確立を進める。ミクログリアのマーカー分子であるCX3CR1の発現細胞においてCreリコンビナーゼを発現するマウス(CX3CR1-Creマウス)とCre依存的にジフテリア毒素受容体(DTR)を発現するマウス(iDTRマウス)を掛け合わせたマウスを用いて、sCVOsのミクログリアを除去した時の血圧への影響を確認する。また、CX3CR1-CreマウスとカルシウムインジケーターであるGCaMP6sを発現するマウス(CAG-LSL-GCaMP6sマウス)を掛け合わせたマウスを用いて、血圧変動時におけるsCVOsのミクログリアの活動を観察する。さらに、CX3CR1-CreマウスとGqタンパク質共役型人工受容体であるhM3Dqを発現するマウス(CHRM3マウス)を掛け合わせたマウスを用いて、sCVOsのミクログリアを人為的に活性化した時の血圧を測定する。 また、本年度の研究成果から継続して、Cre依存的に目的遺伝子を発現させるレンチウイルスベクターを用いた脳部位特異的なミクログリアの活動制御手法の確立を進める。これにより、SFOあるいはOVLTのミクログリアのどちらが血圧制御に関与しているのか検討する。
|