2021 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイトにヒト特異的遺伝的変異を導入した遺伝子改変マウスの生理機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Glia decoding: deciphering information critical for brain-body interactions |
Project/Area Number |
21H05616
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
毛内 拡 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90708413)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | アストロサイト / アドレナリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
アストロサイトは、進化的に複雑な脳を持つ生物ほど大脳皮質に占める割合が増加すること、ヒトアストロサイトはマウスと比べて大きく複雑な突起を持つこと、ヒトアストロサイトをマウスに移植することで記憶・学習の効率が良くなること等が報告されており、知性との関与が示唆されている。しかしながら、アストロサイトのどの要素が知性に関与しているかは明らかになっていない。 我々は、アストロサイトに固有のさまざまな機能タンパク質をゲノムワイドに網羅的に解析した結果、ADRA1Aにのみヒト特異的な遺伝的変異を見つけ、正の自然選択を受けることを見出した。そこで本研究では、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の下流に、ADRA1Aのヒト特異的遺伝的変異を導入した遺伝子改変マウスを独自に作製し、さまざまな切り口から生理学的機能の解析を試みた。予備実験の結果、このマウスは、好奇心が強く、新奇環境に対する探索行動が活発であり、多動性の傾向があることを見出している。この表現型は、新奇環境に置かれた際にノルアドレナリンが分泌されることや多動性にノルアドレナリンが関与することと矛盾がない。 これまでの予備実験で、テールフリックテストやホットプレート試験によって痛み関連行動には異常がないこと、ビー玉覆い隠し試験やクリフアボイダンス試験の結果、不安行動には異常がないことが示唆されている。一方、このマウスは、野生型マウスと比べて有意に体重が増加する傾向にある。この原因として、睡眠・覚醒サイクルに異常があり昼間の活動量が多いため摂食量が増えている可能性、交感神経系の活動を介して腸の活動が変化し、迷走神経を介して中枢神経系に影響を与えていることの二つの仮説が考えられる。今年度はまず、マウスの行動を24時間にわたって計測し、睡眠・覚醒サイクルに異常がないかを中心に評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24時間活動計測の結果、当該遺伝子改変マウスのサーカディアンリズムが変化していることがわかった。また体重増加が亢進していることも確かめられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出した行動表現系が、脳で起こっている現象であることを明らかにするためにアデノ随伴ウイルスを用いて脳細胞特異的な発現系を作製し、さらにオープンフィールドテストや新奇物体認識テスト、テールサスションテスト等の多角的な解析を行う。もし、行動表現形が見つからない場合には、別系統の遺伝子改変マウスを作製することも視野に入れる。
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