2021 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanism of aquatic photosynthesis under fluctuating CO2 environment
Publicly Offered Research
Project Area | Multi-layered regulatory system of plant resilience under fluctuating environment |
Project/Area Number |
21H05660
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山野 隆志 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (70570167)
|
Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
Keywords | CO2不均一性 / 葉緑体 / ピレノイド / CO2濃縮機構 / タンパク質局在変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、モデル緑藻クラミドモナスを用いた順遺伝学的アプローチにより、変動するCO2不均一環境において光合成を柔軟かつ頑健に維持するための多段階の生存戦略を分子レベルで明らかにすることである。これにより、CO2不均一環境における植物のレジリエンスの一端を明らかにするだけなく、水圏における光合成順化機構と、当該研究領域において中心となる陸上植物が持つ光合成順化機構との比較から、不均一環境における光合成維持のためのCO2獲得の制御機構の多様性と共通性について明らかにする。 本年度は、水圏における光合成の維持に必須な葉緑体局在型の炭酸脱水酵素LCIBに着目し、LCIBとVenusの融合タンパク質を発現する株を用いて、葉緑体内でのLCIBの局在変化の定量化と、その時の培地中のCO2濃度測定を行った。LCIBの局在変化は、外環境のCO2濃度が約7マイクロM以上では葉緑体全体に分散し、それ以下ではピレノイド周囲に局在することを明らかにした。また、LCIBの局在変化には、その相互作用因子であるLCICが必要であることも明らかにした。これらの結果から、LCIB/LCIC複合体の局在変化がCO2濃度変化に対して可逆的であること、そしてその局在変化は光強度や光合成活性に依存せず、CO2濃度のみに依存することを証明し、国際学術誌に論文として報告した。CO2不均一環境におけるタンパク質の局在変化によって、柔軟かつ頑健に光合成を維持するメカニズムの一端を明らかにした成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで均一環境だと考えられてきた水圏においても、藻類がCO2濃度の変化に対して極めて鋭敏に応答し、タンパク質の局在を変化させること、そしてその局在変化が光合成の維持に重要であることを証明した。このことから、水圏光合成においても不均一CO2環境が存在すること、そして微細藻には、その応答機構が分子レベルで備わっていることを明らかにすることができたため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
CO2濃度変化に伴って、無機炭素輸送機構が切り替わる分子メカニズムを明らかにするための変異株スクリーニング実験を進める。具体的には、lcib変異株を背景としてランダム変異導入を行い、約20,000株の形質転換株からLC条件でも生育する表現型を示すサプレッサー変異株 を少なくとも5株以上スクリーニングし、その原因遺伝子を同定する。
|