2021 Fiscal Year Annual Research Report
運動経験に依存した中枢回路再編成の臨界期の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Inducing lifelong plasticity (iPlasticity) by brain rejuvenation: elucidation and manipulation of critical period mechanisms |
Project/Area Number |
21H05675
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
能瀬 聡直 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30260037)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 臨界期 / 自発活動 / 運動回路 / 電気シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は自身が生み出す運動の結果を常にモニターし、その成否に照らして神経回路を再編成することで、柔軟かつ適切な運動制御を可能とする。発生・発達期に特に顕著なこの可塑性は動物が適応的な行動を実現するのに必須の機構だがその仕組みは不明である。本研究ではショウジョウバエ幼虫をモデルとしてこの問題に迫る。以前に胚発生過程における運動経験が機能的な運動回路の発達に必須であることを示し、また運動経験の感覚フィードバックの作用を受けて機能を発現し運動回路発達の足場として働くような電気シナプス(GJ)依存性の神経回路を同定した。本研究では、さらにこの足場回路が感覚フィードバックを介して化学シナプス依存性の完成回路に再編成される過程を解明するとともに、その臨界期制御機構を探ることを目的とする。足場回路は運動回路形成の最初期からIP3シグナリング依存的な自発活動を起こすことで筋収縮を誘導し、その結果起こる感覚フィードバックにより自身のGJを誘導する。この足場回路内の自発活動やGJを阻害すると幼虫のぜん動運動に重篤な障害が生じることから、足場回路の活動は運動回路の形成に必須の役割を果たす。 本年度計画においてはこの回路再編過程の臨界期の同定を試みた。温度感受性Gal80を用い、回路内のGJまたはIP3シグナリングを時期特異的にノックダウンした。その結果、孵化直前の数時間の時間帯のみにノックダウンを行うことで、運動回路の発達が阻害されることが分かった。これに対し、これ以外の時間帯にノックダウンを行った場合には影響がなかった。以上の結果から、自発活動とGJを介した運動回路発達に臨界期があることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、回路の臨界期の存在を示すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、臨界期制御機構をさらに追究するとともに、足場回路が感覚フィードバックを介して化学シナプス依存性の完成回路に再編成される過程に関わる神経機構を探る。
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