2021 Fiscal Year Annual Research Report
臨界期を決定するペリニューロナルネット成熟機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Inducing lifelong plasticity (iPlasticity) by brain rejuvenation: elucidation and manipulation of critical period mechanisms |
Project/Area Number |
21H05681
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
宮田 真路 東京農工大学, 農学部, 准教授 (60533792)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | ペリニューロナルネット / 臨界期 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
成体脳の体積の約20%を占める細胞外空間は、細胞外マトリクスによって満たされている。ペリニューロナルネット(神経細胞周囲網, PNN)は、Camillo Golgiによって100年以上も前に発見された中枢神経系に特徴的な細胞外マトリクスであり、神経細胞の細胞体と近位神経突起を網目状に取り囲んでいる。分子レベルでは、高分子多糖であるヒアルロン酸がPNNのバックボーンとしてはたらき、そこに複数のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) が会合し、さらにそれらがリンクタンパク質を含めた糖タンパク質により架橋されることで、細胞外に巨大な凝集体を形成している。臨界期後にPNNがつくられると、可塑性の高い幼若型回路から、安定化した成体型回路へ移行すると考えられている。 しかしながら、脳発達にともないPNNが形成される分子機構はよくわかっていない。齧歯類の大脳皮質では、PNNが抑制性神経細胞の周囲に選択的に、かつ、神経活動依存的に形成される。そこで、本研究では、(1) マウス大脳皮質でパルブアルブミン発現抑制性神経細胞(PV細胞)に選択的に発現しており、(2) 神経活動依存的に発現が変動する条件を満たす遺伝子を探索した。(1) に関して、シングルセルRNA-seqデータベースを用いた調査から、アグリカンと呼ばれるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンが、また、リンクタンパク質の中ではHAPLN1がPV細胞に強く発現することが分かった。さらに、条件(2) について検証するため、薬理学的操作が容易な初代培養神経細胞を用いた。そして、テトロドトキシンにより神経活動を遮断すると、PNN形成が阻害され、その際にアグリカンのみが、大幅に発現低下することを示した。これらの結果から、PNNが抑制性神経細胞の周囲に選択的に、かつ、神経活動依存的に形成される分子機構の一端が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PNNが抑制性神経細胞の周囲に選択的に、かつ、神経活動依存的に形成される分子機構として、標的となる遺伝子が特定できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、酵素処理によりPNNを除去する (loss of function) ことは可能だが、PNN形成を誘導する (gain of function) 技術が存在しない。今後は、本研究で明らかにしたPNN形成の分子機構を応用することで、異所的にPNNを形成させ、それにより神経可塑性を制御できるのか検証する。
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