2021 Fiscal Year Annual Research Report
シナプスタンパク質の生物学的相分離の操作による可塑性、臨界期誘導法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Inducing lifelong plasticity (iPlasticity) by brain rejuvenation: elucidation and manipulation of critical period mechanisms |
Project/Area Number |
21H05692
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
実吉 岳郎 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00556201)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 生物学的相分離 / シナプス可塑性 / CaMKII / 活性操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶の基盤であるシナプス可塑性の誘導・発現機構は詳細に検討されているが、刺激後にシナプス強度を維持する仕組みについてはほとんど明らかになっていない。本研究は、記憶の細胞レベルの現象と考えられる長期増強現象(LTP)に伴うシナプスタンパク質のダイナミクスを生物学的液-液相分離(LLPS)で説明することを目指している。本研究ではシナプスタンパク質のLLPSを阻害、あるいは促進する化合物やペプチドを探索し、臨界期を誘導する試薬の開発に発展させていく。 具体的には(1)CaMKII/グルタミン酸受容体NR2B、betaPIX/GIT1のLLPSを指標にした低分子化合物の大規模スクリーニング、(2)同じく相互作用部位を用いたペプチドの効果を検証、(3)CaMKIIによるLLPSを人為的に制御することでシナプス可塑性が誘導あるいは解除されるか検討する。 今年度は、計画1の大規模スクリーニングで使用するタンパク質の大量調製法の最適化をおこなった。研究計画当初の予定よりもスクリーニングのためのサンプル液量が多く必要になったため、予定していた発現系ではこころもとなかった。そこでさらに効率的な発現、精製法の条件検討をおこなった。今の所少なくともCaMKIIとGluN2Bタンパク質に関しては最適条件で調製できる条件を見出している。他のタンパク質での条件検討を続けていく。計画2では、いくつかのペプチドを単量体から多量体へ変更することによる効果をインビトロでの相分離で試したが、促進効果を示すものの同定には至っていない。引き続き各種ペプチドを検討していく。細胞内でのペプチド発現系ではシナプスに当該ペプチドを局在させる方法を見出したので、今後シナプス可塑性に与える影響を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記憶の基盤であるシナプス可塑性の誘導・発現機構は詳細に検討されているが、刺激後にシナプス強度を維持する仕組みについてはほとんど明らかになっていない。本研究は、記憶の細胞レベルの現象と考えられる長期増強現象(LTP)に伴うシナプスタンパク質のダイナミクスを生物学的液-液相分離(LLPS)で説明することを目指している。本研究ではシナプスタンパク質のLLPSを阻害、あるいは促進する化合物やペプチドを探索し、臨界期を誘導する試薬の開発に発展させていく。 具体的には(1)CaMKII/グルタミン酸受容体NR2B、betaPIX/GIT1のLLPSを指標にした低分子化合物の大規模スクリーニング、(2)同じく相互作用部位を用いたペプチドの効果を検証、(3)CaMKIIによるLLPSを人為的に制御することでシナプス可塑性が誘導あるいは解除されるか検討する。 今年度は、計画1の大規模スクリーニングで使用するタンパク質の大量調製法の最適化をおこなった。少なくともCaMKIIとGluN2Bタンパク質に関しては最適条件で調製できる状況である。当初思っていたより多量のタンパク質を使うので、大量調製のための最適条件を見つける必要があった。計画2では、いくつかのペプチドをインビトロでの相分離で試したが、促進効果を示すものの同定には至っていない。引き続き相互作用部位由来の各種ペプチドを検討して行く。また、細胞内でのペプチド発現系ではシナプスに当該ペプチドを局在させる方法を見出したので、今後シナプス可塑性に与える影響を検討する。これらのペプチドを光制御型へ変更することで、光による可塑性操作を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
計画1 可塑性を取り戻す低分子化合物のLLPSを指標にした大規模スクリーニング CaMKII、NMDA型グルタミン酸受容体NR2Bサブユニットカルボキシル末端、LIMK1、betaPIX、GIT1を大腸菌や昆虫細胞Sf9から大量に精製する。本学所有のOpera Phenix Plus を用いLLPSの形成を促進させる薬物、あるいは形成を阻害する薬物を検索する。得られたヒット化合物は、標的タンパク質との共結晶構造を解くことで結合様式を決定する。構造情報を基により親和性高い、あるいは低い化合物に、本学合成展開支援室の支援を受け改変する。神経細胞での効果を知るため、化合物の存在下で神経細胞にてCaMKIIあるいはbetaPIX/GIT1の分布やLTPでのスパインの形態及びタンパク質間相互作用の変化を検討する。 計画2 LLPSを解除または亢進するペプチド化合物の改変 低分子化合物と同様にオリゴペプチドによりシグナル分子の相分離を促進/抑制できるか検証する。LLPSは多価相互作用によってもたらされるため、当該相互作用の結合ドメインを用いると、単純に競合阻害によりLLPSを阻害する、もしくはペプチドをオリゴマー化させることにより多くの相互作用点を提供するため、LLPSを亢進させることが期待できる。方法:各タンパク質間の相互作用部位(表1)を蛍光タンパク質との融合タンパク質として精製する。mGFPとでは単量体、eqFP670とは2量体、DsRed2とでは4量体タンパク質として作成できる。多量体蛍光タンパク質は凝集しやすい性質があるため、ペプチドをタンデムに連結し結合部位を増やすことも試みる。これらのペプチドは、プラスミドによる発現が可能なため、神経細胞に発現させ、LTPに与える影響を検討する。
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