2021 Fiscal Year Annual Research Report
非典型翻訳の試験管内再構成とそのメカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multifaceted Proteins: Expanding and Transformative Protein World |
Project/Area Number |
21H05727
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
町田 幸大 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (20553093)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | CAGリピート / 非標準翻訳 / ポリアミン / 再構成型無細胞翻訳系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、CAGリピート配列の異常伸長に起因する非典型的な翻訳をヒト因子由来の再構成型無細胞翻訳系で再現することにより非典型翻訳の分子機構の一端を明らかにすることである。そのための研究計画として、本年度は申請者が開発したヒト因子由来の再構成型無細胞翻訳系を利用して翻訳開始因子群が非典型翻訳に与える影響を解明するための実験に取り組んだ。CAGリピート配列を持つ遺伝子をヒト因子由来の再構成型無細胞翻訳系で翻訳すると、細胞で行われた先行研究と同様にin-frameのCAGリピートからのポリグルタミン以外に、翻訳の読み枠がずれて「+1 frame:CAG→AGCリピートのポリセリン」や「+2 frame:CAG→GCAリピートのポリアラニン」が翻訳されたことから、再構成型の無細胞翻訳系でもCAGリピート由来の非典型翻訳を再現できることが明らかになった。当初予定していたeIF3サブユニットの個別添加では、eIF3自体が再構成型無細胞型翻訳系の必須因子であるため、システムの翻訳活性が維持できず再現性のある結果が得られなかった。そこで、微生物からヒトまで普遍的に存在し細胞の翻訳調整に関与すると言われるポリアミンに着目した。我々の研究グループはこれまでに、ポリアミンの濃度上昇が特定遺伝子の翻訳をフレームシフトによって誘導することを明らかにしており、ポリアミンがCAGリピートのフレームシフトにも関与しているのではないかという作業仮説を立てた。真核細胞で主要とされる3種のポリアミンがリピート配列の翻訳に与える影響を精査するため、我々が開発したヒト因子由来の再構成型試験管内翻訳系を利用して各フレームの翻訳量に違いが見られるかどうかを解析した。その結果、それぞれのポリアミンがCAGリピート配列の各フレームの翻訳に影響を与えることまたポリアミンの種類によってその効果が異なることが分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に記した翻訳開始因子群の個別添加では再現性のある結果が得られなかったが、新たに着目した翻訳調節因子のポリアミンがCAGリピートの非典型翻訳に影響を与えるという新規の発見ができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリアミンがCAGリピートの非典型翻訳に影響を与えるという新規の発見ができたが、その作用機序を明らかにするための解析を進めて行くことで、研究目的であるCAGリピート配列の異常伸長に起因する非典型的な翻訳の分子機構の一端を明らかしたい。具体的には以下を予定している。ヒトの再構成型無細胞翻訳系を構成するRibosome、翻訳開始因子、翻訳伸長因子、翻訳終結因子のうち、①ポリアミンは何に作用することで非典型翻訳が促進されるのか、また、②CAGリピート含有コンストラクトのどこから非典型翻訳が始まるのかを調査する。①については、ポリアミン存在下と非存在下でショ糖密度勾配遠心法による分画を行い、各種抗体を用いたウエスタンブロット法により翻訳開始因子群の分布とポリアミンの分布を解析することで、ポリアミンが作用する因子を特定する。②については、CAGリピート配列の上流にストップコドンを導入し、そのストップコドンの有無で非典型翻訳産物のバンドパターンが変わるかどうかを、各種抗体を用いたウエスタンブロット法により調査する。
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