2021 Fiscal Year Annual Research Report
液-液相分離によるメンブレンコンタクトの構築基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multifaceted Proteins: Expanding and Transformative Protein World |
Project/Area Number |
21H05731
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤岡 優子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (80399964)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
メンブレンコンタクトサイト(MCS)はオルガネラ間の機能連携や分子交換に重要な働きを担い、オートファジーにおいては小胞体から隔離膜への脂質のバルク輸送の場として機能する。通常COPII小胞の形成に働くSec因子群は栄養飢餓時、構造変換を経てAtg因子群とともに隔離膜-小胞体コンタクトを形成し、脂質輸送の場を構築する。しかし、その分子基盤は不明である。これまでの知見から、隔離膜(IM)-小胞体(ER)コンタクトの実体はSec因子とAtg因子が液-液相分離することで形成された液滴であることが強く示唆された。本研究ではこれらタンパク質群および脂質膜を用いてin vitroでIM-ERコンタクトを再構成し、その液滴としての性質および構造的特徴、液滴を構築する相互作用基盤、そして膜間の脂質輸送を支える分子基盤を明らかにする。オートファジーにおける重要課題である隔離膜伸展機構、さらには相分離がメンブレンコンタクト構築および脂質輸送に果たす普遍的役割の解明を目指す。 本年度は、IM-ERコンタクトサイトの主要構成因子である天然変性タンパク質Sec16の調製ならびに相分離実験を試みた。また出芽酵母を用いて、IM-ERコンタクトに局在するSec16などのERES構成タンパク質と、Atg2などのIM局在タンパク質の動的な振る舞いについて解析を行った。出芽酵母に共発現させたSec16とAtg2の輝点は共局在するものがあることをまず確認した。続いてFRAP解析を行い、Sec16はダイナミックな局在を示すこと、Atg2については静的なものとダイナミックなものが混在していることが明らかとなった。経時的な観察を行うとSec16の形成する輝点は融合することが確認され、相分離阻害剤の添加で輝点が分散した。以上の結果から、Sec16が形成するIM-ERコンタクトサイトは相分離状態であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエでのSecボディの報告から、IM-ERコンタクトサイトでは天然変性タンパク質Sec16が中心となって液滴を形成するとの着想のもと、Sec16液滴の形成を試みた。しかしながら、十分な濃度のSec16タンパク質を得ることに難航し、取得できた低濃度条件では液滴の形成は見られなかった。一方高速AFM観察により、Sec16が実際に天然変性タンパク質であること、絡み合って会合する性質があることが確認できた。そこで出芽酵母を用いてIM-ERコンタクトサイトの物性およびダイナミクスの解析に取り組み、実際にコンタクトサイトが液滴の性質を持つことを明らかにすることに成功した。再構成系での解析は難航しているが、細胞の解析でそれをバックアップできている。
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Strategy for Future Research Activity |
先述した通り、Sec16の精製タンパク質の調製が難航している。現在は出芽酵母から調製しているが、大腸菌、昆虫細胞、哺乳類細胞など、あらゆる発現系を試みる。さらに精製タグや融合する蛍光タンパク質の種類、修飾位置も検討する。Sec16単独で液滴形成しない場合は、Secボディの構成成分であるSec23、Sec24などの因子も添加する他、オートファジー誘導に重要と考えられているAtg1によるリン酸化修飾も検討する。一方高速AFMではすでに得られている低濃度Sec16でも解析が可能であるため、脂質膜およびAtg2とSec16との相互作用の解析を高速AFMを用いて進める。また並行して出芽酵母を用いたIM-ERコンタクトのさらなる解析を進める。またクライオ電子顕微鏡によりIM-ERコンタクトの超微形態解析にも取り組む。
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