2021 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患に関わる凝集体の形成・抑制の in situ 構造生物学
Publicly Offered Research
Project Area | Multifaceted Proteins: Expanding and Transformative Protein World |
Project/Area Number |
21H05733
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山形 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20463903)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | クライオ電子顕微鏡 / 凝集体 / アミロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
まず最初に比較的容易に細胞内で凝集体形成が起こることが知られているHTT遺伝子のポリグルタミン酸配列ペプチドをテストサンプルとしてクライオ電子線トモグラフィー法による解析を開始した。グリッド上でHEK293TやCOS7といった接着性の培養細胞を培養し、GFPを融合させたHTT遺伝子CAG反復配列を導入した。細胞内に形成される凝集体を蛍光セルイメージャーで確認した後、グリッドを液体エタン中に急速凍結した。次に光・電子相関顕微鏡(CLEM)によりクライオ条件下でのグリッドの蛍光画像を取得した。同じくグリッドをクライオ条件下でcryo-FIB走査電子顕微鏡にて観察し、CLEMの蛍光画像と重ね合わせて凝集体を発現している箇所を同定した。cryo-FIB走査電子顕微鏡を用いて凝集体発現箇所をラメラに加工し、クライオ電子顕微鏡によるトモグラフィー撮影を試みた。現状として、クライオ電子線透過像から細胞内微細構造の特徴が得られるまでの薄さのラメラ加工に成功している例が少なく、cryo-FIBによるラメラ加工の技術向上が必要と考えられた。また、加工や保存における霜の付着の問題も明らかとなった。これらについては新たに導入されたcryo-FIBの自動化プロトコールを利用することによりある程度解決可能になりつつある。また、グリッドのスクエアの中央付近に1、2個程度の細胞が配置されることが望ましいが、そのコントロールが難しいこともわかった。このため新たにより大きなスクエア面積を持つグリッドに細胞接着のためのカーボン膜を貼り付けたグリッドの開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
cryo-FIB走査電子顕微鏡によるラメラ加工やクライオ電子線トモグラフィー撮影と解析が当初の予定より進んでいない。特にcryo-FIB走査電子顕微鏡を用いたラメラ加工や保存における霜付着の問題に加えて、グリッド上での適切な密度の細胞培養やグリッド凍結の最適化など多くの問題点が明らかとなったので、現在これらの解決に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
HTT遺伝子やC9Orf72遺伝子におけるリピート配列だけでなく、タウやアミロイドβといった神経変性疾患に関わる凝集体原因遺伝子の安定発現株の作製に取り掛かる。安定発現株化することにより、高効率な凝集体形成や、グリッド上での適切な細胞密度での培養が可能となると考えられる。また凝集体形成法も患者脳や病気モデルマウス脳の抽出液をシードとして加えて凝集体を形成する方法も試していく。細胞内凝集体の構造をクライオ電子線トモグラフィー法を用いて解析することにより、病態と凝集体構造の関連を明らかにしていく。
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