2021 Fiscal Year Annual Research Report
NMR study on local structural fluctuations of double-stranded DNA
Publicly Offered Research
Project Area | Genome modality: understanding physical properties of the genome |
Project/Area Number |
21H05746
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅瀬 謙治 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00300822)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | NMR / 二本鎖DNA / 動的構造 / エピゲノム修飾 / 溶液環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにも二本鎖DNAのダイナミクスをNMR(R1ρ dispersion法とCLEANEX-PM法)により解析していたが、用いていたパルスプログラムが古いため、水の巨大なシグナルが消えにくい、ベースラインが歪む、わずかにパラメータが異なる非常に多くの実験セットをセットアップしないといけない(NMR測定をセットアップするのに1時間以上かかる)、という問題を抱えていた。そのため、本研究では、きれいなNMRスペクトルを少ない労力で得られるようにパルスプログラムを更新する作業から始めた。ここでの改良点は、(1)より水のシグナルが消えやすいパルスプログラムを組み込む。(2)ベースラインが歪む原因となるパルスプログラム内のディレイタイムを最適化する。(3)異なるパラメータをリスト化し、それを読みこみ、たった1つの実験セットをセットアップするだけで良くする。 この3つの改良点をR1ρ dispersion法とCLEANEX-PM法のそれぞれに適用した結果、ものの10分もかからないうちに両測定のセットアップができるようになった。しかも、得られるスペクトルは非常にキレイである。この新しいパルスプログラムをまずはバッファー中の二本鎖DNAのダイナミクス解析に適用した。ここで得られた結果は、続く実験の比較対象になるものである。 また、班員でもある横浜市立大学の古川亜矢子助教と共同研究を開始し、横浜市立大学にある日本最大のNMRである950 MHz NMR装置を用いて測定を行った。測定対象としているのはDNAのイミドプロトンであるが、このシグナルは重なりやすいため定量的な解析が難しいが。しかし、950 MHz NMRでは分解能が非常に高いためより低磁場のNMR装置では重なってしまうシグナルも分離して観測できるというメリットがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該領域の科研費の審査結果が開示されたのが9月で、実質の研究活動時間が約半年と限られていたため、1年間を想定していた研究計画からはやや遅れをとっている。ただし、上記のようにNMR測定が極めて簡便に行えるようにセットアップできており、かつ、サンプル調製は容易であるため、随時測定を行っていけば遅れを取り戻せると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最適化したパルスプログラムを用いて、核内模倣環境における二本鎖DNAの構造ゆらぎを1塩基対レベルで解析する。核内環境の模倣には平均分子量が200 Daのポリエチレングリコール(PEG200)を用いる。PEG200が核内環境の模倣に最適であること、およびそれが核酸へ及ぼす影響は、甲南大学の杉本直己らが精力的に研究している。杉本らは核内模倣環境でメチル化DNAの融解温度が低下することも報告している。 また、紫外可視分光光度計を用いて試料溶液の温度を上げながら260 nmの吸光度をモニターする。この実験によって、二本鎖DNAが一本鎖に分かれる融解温度を決定し、核内の模倣環境においてエピゲノム修飾が二本鎖DNA分子全体の熱安定性に及ぼす影響を明らかにする。この実験は核内の模倣環境中でメチル化により融解温度が低下したという杉本らの結果に一般性があるのか否かを検証する狙いもある。なお、バッファー中ではエピゲノム修飾が融解温度をほぼ変えないことを先行研究で明らかにしている。
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