2021 Fiscal Year Annual Research Report
曲げとねじれのモードカップリングを通して、分裂期染色体の凝縮を理解する
Publicly Offered Research
Project Area | Genome modality: understanding physical properties of the genome |
Project/Area Number |
21H05765
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
横田 宏 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 特別研究員 (10846356)
|
Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
Keywords | 染色体凝縮 / 粗視化分子動力学シミュレーション / 核様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体は、クロマチンが連続するループ構造を作ることで棒状に凝縮したものであり、そのループはコンデンシンによって形成される。コンデンシンは、DNAの中心軸自体がねじれた構造 (スーパーコイル構造)をも取り入れるが、染色体に対するスーパーコイルの影響は未解明問題の一つである。 そこで、染色体凝縮に対するスーパーコイル生成の影響を調べるため、ランジュバンシミュレーションに基づいた力学モデルを構築した。スーパーコイルのような「ねじれ」構造を扱う場合には、鎖の中心軸周りの「ねじれ」であるtwistと鎖の中心軸自体の「ねじれ」であるwritheとを表現する必要がある。従来までのクロマチンを表現するモデル高分子には、twistが取り入れられていなかった。そこで、まず、従来のモデル高分子 (バネ-ビーズモデル)を拡張し、twist弾性をも取り入れたモデルを構築した。R3年度は、このモデルを用いてねじれ変形を取り入れたループ生成のシミュレーションを行い、スーパーコイルを含むループ生成を観察した。 また、「ねじれ」が重要となる現象として、葉緑体内のcircular DNAの振る舞いが挙げられる。葉緑体内のcircular DNAはスーパーコイルを含む凝集体(核様体)を生成しており、細胞分裂時にはDNAの切断により、凝集体が分散すると考えられている。研究代表者は、この現象をモデル化し、ランジュバンシミュレーションを行った。まず、二重らせんを持つモデル高分子とそれによるスーパーコイル構造を構築した。さらに、ビーズの欠損を用いて、DNAの切断をモデル化した。ビーズの欠損によりスーパーコイルの崩壊が確認でき、凝集体分散のメカニズムについての仮説を支持する結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ねじれを表現するためのミニマルモデル高分子を構築した。また、そのモデルを用いて、ねじれ変形をも取り入れたループ生成のモデルも構築した。 さらに、このモデルを用いて、ループ構造の各パラメータ依存性を確認しており、本格的に物理的な側面について議論できる段階にきているため、順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
各パラメータを変化させながら、ねじれ変形をも取り入れたループ生成のシミュレーションを行い、そのループ構造を観察する。 またループ構造がどのようなパラメータに依存して、生成されうるかを明らかにする。
|