2021 Fiscal Year Annual Research Report
Cellular and luminal behaviors during thyroid morphogenesis
Publicly Offered Research
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
21H05788
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
進藤 麻子 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (60512118)
|
Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
Keywords | 甲状腺 / 形態形成 / アフリカツメガエル / 球体組織 / 発生生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では甲状腺の形態形成を制御する分子機構の解明を目的とし、球体組織である甲状腺濾胞の内腔を満たすコロイドとその周囲細胞との相互作用に着目している。発生過程にある甲状腺の形態解析に適したアフリカツメガエル幼生をモデルとして用い、甲状腺濾胞の内腔が拡大する過程と、細胞動態の変化を立体画像解析により解析した。甲状腺濾胞の形成は細胞間に小さな内腔が出現することから始まり、その小さな内腔同士が結合して濾胞の拡大を促進する可能性が示唆されている (Takagishi et al and Shindo*, 2022)。一般的に、内腔を持つ管腔組織では、内腔に接している細胞膜は頂端側、その反対側は基底側と呼ばれ、各細胞は明確な頂端-基底極性を確立することが知られる。一方で、アフリカツメガエル幼生の甲状腺で観察された内腔の融合が生じる場合は、内腔と接する側を柔軟に変化させる必要があるため頂端-基底軸が確定しておらず、ある程度の揺らぎが必要である可能性が高い。そこで、頂端側のマーカーとなる細胞接着分子の局在や機能を探索したところ、濾胞の拡大が生じる状況ではその発現量が柔軟に変化することがわかった。さらに、甲状腺のような球体組織(濾胞)が多数集合した形態をもつ多球体組織の構築には、細胞の分裂方向や隣接細胞との境界面の力学的制御が重要であることが数理モデルによるシミュレーションで予測されていることもわかった。今後、濾胞内腔(コロイド)の融合を可能にする細胞動態制御メカニズムとして、細胞接着や細胞極性の揺らぎに注目し、これらの制御機構を明らかにしていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカツメガエル幼生の甲状腺形成機構に関する論文が今年度受理された。この論文により、甲状腺の濾胞形成過程が開始するには幼生が餌を摂取することが必要であり、栄養に依存する分子機構が甲状腺の形態形成の基盤にあることを示した。形態形成が体外から取り入れる栄養に依存するということは、餌に含まれる栄養素を操作することにより、必要な分子機構を制御できる可能性があることも意味している。本研究ではこれを利用し、甲状腺濾胞の内腔(コロイド)と細胞の相互作用の必要性を解析することが可能となっている。本研究は未だ明らかとなっていない濾胞を拡大する甲状腺細胞の制御機構の解明を目指しているが、その候補として濾胞内腔との相互作用に着目している。これまでのところ、細胞接着分子の動態制御がその基盤にあることが見出されており、一定の成果が得られている。また、領域会議で甲状腺濾胞形成のシミュレーションに応用可能な数理モデルを紹介いただき、アフリカツメガエル幼生の甲状腺形成で着目すべき細胞動態を絞り込むこともできている。以上から、本年度の計画は概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は細胞極性、細胞接着の制御機構の解析を進めるとともに、甲状腺濾胞細胞と内腔の相互作用を画像で捉えることを目標とする。技術的な問題から、甲状腺濾胞形成のライブイメージングを行うことは未だ困難であるが、培養法や内腔の可視化方法を工夫してその実現を目指す。また、数理モデルによるシミュレーションにより球体集合体の構築に必要であることが予測されている細胞分裂方向の制御や細胞間相互作用の実態を分子的に明らかにするため、アフリカツメガエル幼生の甲状腺に対して細胞極性や細胞接着の操作を行う。用いる手法は上述の論文で開発した幼生へのマイクロインジェクション法などを用いる。また、ライブイメージングや固定標本の3D画像撮影を併用して、細胞接着や細胞骨格の操作により内腔形成がどう変化するか明らかにし、甲状腺濾胞の形成機構の解明を目指す。
|
Research Products
(5 results)