2021 Fiscal Year Annual Research Report
A theoretical study of 3D morphogenesis shaped by tissue-scale cytoskeletal alignment
Publicly Offered Research
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
21H05793
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
斉藤 稔 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任准教授 (20726236)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 形態形成 / 自己組織化 / トポロジカル欠陥 / 液晶 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の繊維により3次元的な「からだ」を建築する場合、繊維構造を「からだ」の表面全体に張り巡らし三次元的な構造の支えとする必要がある。この際、必ず極となるトポロジカル欠陥が存在してしまう。例えばヒドラ切片の再生過程の実験では、放射状にアクチン繊維が密集するトポロジカル欠陥が出現しそれが三次元的に突出する構造の起点となる様子が観察されている。この様な、トポロジカル欠陥により駆動される三次元組織構築を理解することが本研究のコンセプトである。 ヒドラ切片における+1欠陥と呼ばれるアクチン繊維が集中したトポロジカル欠陥の出現を理解するために、フェイズフィールド法とネマチック液晶理論を組み合わせた数理モデルの開発を行った。ヒドラ切片組織全体を記述する連続体として3次元空間中にフェイズフィールド場φを定義し、φの表面上のみでアクチン繊維の向きを規定するベクトル変数nを導入した方程式を立式した。アクチン繊維の配置エネルギーとして、液晶理論を援用し、曲げやツイスト、放射状に配置されることに対するエネルギーなどを考慮した。構成したモデルを数値シミュレーションし解析を行った。 モデルの大枠は出来上がったものの、解析の結果、アクチン繊維の挙動をネマチック液晶として正しく扱えていないなどの問題点や、モデルの都合で組織表面以外の場所にも定義したアクチン配向場が組織表面のアクチン繊維ダイナミクスにも影響を与えてしまっているなどのアーティファクトも判明し、解決方法を模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現象を捉えるための数理モデルの大枠は出来上がったものの、いくつかの問題点を解決できていない。具体的には(i)アクチン繊維の挙動をネマチック液晶として正しく扱えていない(ii)細胞およびアクチン繊維を組織表面上のみに設定したいが、現状の数理モデルでは表面以外の組織内部、外部にもアクチン繊維を定義してしまい、その影響が組織表面のアクチン繊維ダイナミクスにも影響を与えてしまっている、(iii)計算量が非常に大きい、といった問題がある。これらの問題を解決できていないため、やや遅れているという判断を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在定式化を進めているフェイズフィールド法による3D数理モデルの完成を目指す。それと並行し、より解析とシミュレーションが容易なシンプルな数理モデルの開発を検討する。具体的には、組織曲面の構造を二次元平面上の等高線で表現し、組織の変形は等高線の変形と表現するようなモデルを構築する予定である。 これらの数理モデルから(i)静止した曲面上のトポロジカル欠陥の動きや配置、(ii)変形する曲面上でのトポロジカル欠陥の動き、(iii)トポロジカル欠陥から曲面の変形にフィードバックがある状況でのトポロジカル欠陥及び組織曲面の変形ダイナミクス、を調べる。特に(iii)では、 トポロジカル欠陥周辺で働く応力等を物理的・生物学的に妥当な形で導出・モデリングできるか、生物システムに特有のエネルギー消費を伴うアクティブな力の発生をどのように取り入れるか、という問題が存在し、これらを克服する必要がある。(iii)の結果から、三次元的な形作りの隠れた法則を数理的に明らかにしていく。
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