2021 Fiscal Year Annual Research Report
多産を可能にする子宮:細胞外マトリクスを充填した脱落膜によるマウス胚の形作り
Publicly Offered Research
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
21H05794
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | マウス / 子宮 / 脱落膜 / 細胞外マトリクス / 形作り / 原子間力顕微鏡 / メカニカルフォース |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスは、20個近い受精卵が等間隔で着床できる。着床した胚は一つずつ、子宮から分泌される細胞外マトリクス(ECM)を素材とする特殊な構造である脱落膜に覆われて発生する。しかし、多数の胚が子宮内の限られたスペースで等間隔で整列し、お互いに干渉することなく、整然と一定方向に発生する仕組みは明らかでない。そこで、今年度は、胚の形態形成の場となる脱落膜の形成機構と胚の卵円筒形態に及ぼす脱落膜の力学的機能について解析を進めた。 脱落膜は、着床後1日から2日以内に着床した胚の数だけ形成される。その間、コラーゲンなどECMが分泌されるとともに、様々な分解酵素(MMP)が活性化されることでECMのリモデリングが起こる。そこで、脱落膜で発現するECM関連分子について発現解析を行った。発現解析は、mRNAレベルまたはタンパク質レベルでin situ hybridization法と免疫抗体染色法を用いて解析した。また、主要なECMであるLaminin遺伝子座に融合タンパク質として蛍光蛋白質をノックインした遺伝子改変マウスをゲノム編集法を用いて作製した。実際ヘテロ変異体では、蛍光融合蛋白質の発現を共焦点レーザー顕微鏡を用いて確認することができた。また、現在までに、in vitro培養下で着床直後の胚が球形から卵円筒形へと形態変化するには、20kPa程度の硬さのゲルやデバイスで胚周辺が囲まれている必要があることを明らかにしている。そこで、実際の子宮内で胚を取り囲んでいる脱落膜の物理的な硬さを、原子間力顕微鏡を用いて計測した。結果、胚の側方部の硬さは、20kPa以上であるのに対して、胚の遠位側部の硬さは、20kPa以下であった。つまり、脱落膜は胚の伸長しない側は伸長する側と比較してより硬くなっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の採択が9月となったが、実質半年間の研究期間であったが、当初の予定通りに研究を進めることができた。特に、注目している細胞外マトリクスについて、蛍光蛋白質で発現解析可能なノックインマウスの作製に成功したが、技術的に容易ではないとされているゲノム編集法を用いて短期間で作成できたことがあげれらる。また、得られた研究成果の一部は国際誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
作製された蛍光タンパク質のノックインマウスを用いて脱落膜内における発現などを詳細に解析する予定である。また脱落膜の固さ計測については、脱落膜内で発現する遺伝子マーカーと比較しつつ、領域マップと硬度マップの作成を詳細に進める予定である。
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