• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2021 Fiscal Year Annual Research Report

Spatiotemporal representation of odors in the human brain

Publicly Offered Research

Project AreaAnalysis and synthesis of deep SHITSUKAN information in the real world
Project/Area Number 21H05808
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

岡本 雅子  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (00391201)

Project Period (FY) 2021-09-10 – 2023-03-31
Keywords嗅覚 / ヒト脳機能イメージング / 脳波 / 機械学習
Outline of Annual Research Achievements

匂いは、甘い、リンゴのような、快いなど様々な「感じ」、つまり「質感」を持つ。しかし、ヒトの脳において、末梢からの嗅覚入力が匂いの質感へと変換される経時的な過程は、未解明な点が多い。本研究では、ヒトの脳において嗅覚情報が質感へと変換される過程の時間的側面を明らかにすることを目的とし、様々な質感を持つ匂いに対するヒトの脳の反応を、ミリ秒単位の時間分解能を持つ脳波計で計測した。まず機械学習を用い、嗅覚誘発脳波の時空間的パターンから、呈示した匂いの種類を判別する解析を行った。その結果、匂いの種類は、匂い呈示100ミリ秒後から統計的に有意に判別でき、約350ミリ秒後に最大となること、その脳における信号源は100ミリ秒後において一次嗅覚野を含む領域に、350ミリ秒後において2次嗅覚野原を含む領域に推定されることが示された。さらに、匂いの判別成績から脳における匂い表象の類似度構造を推定し、主観的な知覚との関係を表象類似度分析 (Representational similarity analysis)により調べた。その結果脳における匂い表象は、匂い呈示約350ミリ秒後から匂いの不快さと、約500ミリ秒後から匂いの快さ及び、匂いの主観的な質(果物のような、花のようななど)と有意に相関すること、これらの脳における信号源は、感情や意味をつかさどる脳の領域に推定されることが明らかになった。これらの結果から、ヒトの脳における匂いの質感の表象は、匂い呈示後約350ミリ秒から生じ、不快さ、快さ、主観的な質それぞれに異なる時間的経過を示すこと、匂いの質感が生まれる過程では嗅覚野だけではなく感情や記憶に関わる脳の領域が関与することが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

匂いは常に生活環境に存在し、「リンゴの匂い」など、明確に認識されるものから、「なんとなく安心する」など認識されにくい影響を含め、ヒトの心理や行動に影響を及ぼすと考えられる。本課題では、匂いに対するヒトの脳活動を、時間的精度に優れた脳波(EEG)と、空間的精度に優れた機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測し、匂いが、いつ、どの脳領域で、どのように表象されるかを明らかにすること、また、日常生活で遭遇する様々な匂いに対する脳の活動を調べることにより、匂いが、自然で多感覚な情報処理に及ぼす影響を明らかにすることを目指している。2021年度、脳波を用いた研究については「研究実績の概要」に記載した内容の論文執筆と共に、同データを用いて更なる解析を行い、今後の研究のシーズとなるような現象を見出した(「今後の研究の推進方策」に詳術)。一方、fMRIを用いた研究では2つの課題に取り組んだ。1つ目は、日常生活で接する多様な匂いの質感の脳における表象を明らかにすることを目的とした。その際、実際に匂いを呈示する実験計画では、扱える匂いの種類に限界があるため、匂い想起しやすい動画を刺激とし、それを見ながら匂いを想像している際の脳活動を評価するというアプローチを計画した。2021年度は、匂い及び動画刺激の探索と、予備的なMRI計測を行った。2つ目の課題では、日常生活で接する匂いの一例として赤ちゃんの体臭成分を嗅いでいる際のお母さんの脳活動の評価を行った。その結果、母子関係が良好なグループにおいては、赤ちゃんの体臭成分を嗅いた場合に、対照サンプルを嗅いだ場合に比べて、尿中オキシトシンの濃度が上昇すること、その際、オキシトシン分泌に関わることが知られる視床下部の活動が高まると共に、社会性に関与するとされる複数の脳領域の賦活が高まること、これらの効果は匂いの主観的な評価とは相関しないことが明らかになった。

Strategy for Future Research Activity

脳波を用いた研究については、昨年度の解析において、嗅覚誘発脳波の比較的早い潜時のデコーディング成績の個人差と、被験者の嗅覚特性(匂いの識別能力)の個人差に有意な関連性がみられることが示唆された。当該時間帯は、匂いの主観評定とは相関が認められるよりも早い潜時であった。そのため、昨年度得られた結果は、脳において知覚が表象される前の匂い情報の表象が、匂いの識別能力を左右するという、興味深い現象を示している可能性がある。本年度は、この現象をより詳しく検証するための実験を行う。具体的には、同様の現象が個人内でも認められるか、すなわち、匂いの識別に成功したときと失敗したときで、早い潜時の匂いの表象がどのように異なるかを検証する。また、早い潜時の匂いの表象が、匂いに対する注意や、匂い識別訓練などの影響を受けるかどうかも検証する。これらによって、人が匂いを識別する上で鍵となる神経コーディング様式の特性を明らかにすることを目指す。fMRIを用いた研究課題のうち、動画視聴時の匂い想起を対象とした課題については、実際に匂いを嗅いでいる場合と、動画を見ながら匂いを想起している場合とで脳活動を計測し、これら2種類の条件において、脳における匂いの表象の共通点、相違点を解析する。さらに、多様な匂いを想起させる動画を視聴している際の脳活動を計測・評価することにより、実際に匂いを呈示する実験計画では扱いきれない多様な匂いについての脳における表象を探索することを目指す。赤ちゃんの体臭を対象としたプロジェクトについては、詳細な解析を進め論文執筆を行うと共に、赤ちゃんの画像など視覚刺激と嗅覚刺激のクロスモーダルな効果の検討に着手する。また、プロジェクト全体を通して、脳波とfMRIのデータのフュージョンの可能性を検討し、脳における匂いの表象の時空間的変動を、より詳しく解析することを目指す。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] Spatiotemporal dynamics of odor representations in the human brain revealed by EEG decoding2022

    • Author(s)
      Mugihiko Kato, Toshiki Okumura, Yasuhiro Tsubo, Junya Honda, Masashi Sugiyama, Kazushige Touhara,Masako Okamoto
    • Journal Title

      PNAS

      Volume: - Pages: -

    • Peer Reviewed / Open Access

URL: 

Published: 2022-12-28  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi