2021 Fiscal Year Annual Research Report
おいしさから紐解く快情動への身体反応とその神経機構
Publicly Offered Research
Project Area | Analysis and synthesis of deep SHITSUKAN information in the real world |
Project/Area Number |
21H05817
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
村田 航志 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10631913)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 神経科学 / 情動 / 摂食行動 / 食嗜好 / 自律神経 / 内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では快情動の客観的な測定を可能にする身体反応の指標をつくり、快情動が生じる脳内メカニズムを理解する。おいしい食べ物や優れた芸術は私達に喜びや多幸感をもたらす。喜びも多幸感も私達の生活を豊かにする重要な質感である。しかし、快情動体験の脳内メカニズムは五感を通じた物体の質感認識に比べて理解が進んでいない。理解が進まない一因は、快情動体験を客観的に定量評価することの困難さである。本研究では遺伝子工学を用いた侵襲的実験が可能なラットを用いて快情動が生じる神経機構を明らかにすること、そのために快情動体験を動物で客観的に評価するための指標をつくることを目指す。動物がおいしさ体験をしたときの身体反応を指標に快情動体験を記述し、快情動の形成に関わる神経機構を明らかにする。 2021年度はラットの超音波発声(ultrasonic vocalization, USV)を指標とした情動測定を実施した。ラットは社会コミュニケーションにUSVを用いるほか、快や不快をもたらす刺激を体験した際にもUSVを発する。そこで嗜好性の高い食物を摂食したときの快情動をUSVで評価できるかを検証した。後述のとおり、ラットはチョコレート摂食時にUSVを発することが確認された。また、チョコレート摂食によるUSVはオピオイド受容体拮抗薬の全身投与によって減少した。本研究成果は、ラットのUSVから食がもたらす快楽的情動を推定できる可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. おいしさ体験にともなうラットの身体反応の客観的測定 ラットUSVによる快情動を測定するために、防音箱ならびに超音波マイクを設置し、同一ケージ内で飼育した成体オスラット2匹からUSVを記録した。防音箱にラットを移動し、チョコレートを提示、摂食する経験を繰り返した。その結果、ラットはチョコレートを期待している間とチョコを摂食しているときにshort 50-kHzに分類可能なUSVを発声することがわかった。short 50-kHz USVは先行研究でポジティブな情動反応とされており、嗜好性の高い食物の摂食時のポジティブな情動反応をUSVとして測定できる可能性が示された。また、教師あり機械学習により、チョコレート期待時と摂食時のUSVは、波形成分から分類可能であることが示唆された。
2. おいしさ体験への身体反応を引き起こす神経機構 1で発見されたチョコレート期待時と摂食時のUSVはオピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンの全身投与で阻害された。チョコレート摂食にかかるUSV発声にはオピオイドが関わることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ラットの情動反応をUSVで評価する。行動薬理学実験、オプトジェネティクス実験を実施し、嗜好性の高い食物を期待するとき、摂食するときにshort 50-kHz USVが生じるの神経機構を探る。
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Research Products
(11 results)