2021 Fiscal Year Annual Research Report
Embodied cognition in the development of craft skill
Publicly Offered Research
Project Area | Analysis and synthesis of deep SHITSUKAN information in the real world |
Project/Area Number |
21H05823
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野中 哲士 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (20520133)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | アフォーダンス / 探索 / 身体性 / 身体技法 / ハビトゥス / 習慣 / 発達 / 注意の教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは,工芸の現場,特に轆轤を用いて粘土を成形する陶工の技能を対象として,モノの物性や状態のダイナミックな変化に適応する「モノを知る動き」の特徴についての検討を通して,質感知研究とスキル研究,考古学研究を結ぶ,モノの物性や状態のダイナミックな変化に適応する「モノを深く知る身体技法」をめぐる新たな学際的研究領域を開拓することを目的としている.本研究で対象としている陶芸技能においては、形態は素材・道具(轆轤)・手の相互作用から創発するものであり,モノと接するところに現れるダイナミックな技能が直接問題となる.2021年度は,これまで行ってきた実験で蓄積された陶芸動作および形態の膨大なデータをもとにした新たな分析を行った.分析の対象となった実験は,10年以上の作陶経験者が,4種の幾何学的形状を異なる粘土量の条件で制作したものである。新しい分析は,慣れない形態を模倣して制作する場面における,陶芸動作の調整および形態発生のプロセスに関するものであり,分析の結果は,近日中に国際学術雑誌に投稿し,発表する予定である.また2021年度には,世代を超えて技能が受け継がれること,また受け継がれる技能から新たな展開が生じることを何が可能にしているのかという問題について,理論的考察を行った論文を2編執筆した(ともに2022年度公刊予定).これらの論文では,実験の時間スケールを超えた,長い時間をかけて獲得される技能とその変化を可能にする環境について,生態学的な観点から論じている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの状況のため新たに国内外で実験を行うことはかなわなかったが,これまでの研究を通して膨大な実験データが蓄積されており,2021年度はこれらのデータの分析を着実に進めることができた.現在,これらの分析は現在最終段階に入っており,その結果は,近日中に国際学術雑誌に投稿することを予定している.また,2021年度の後半には,長期的なスパンで深化していく質感知の技能に関して理論的な考察を行った論文を2編執筆することができた.これらの論文はいずれも,2022年度に公刊される予定である.研究はほぼ予定通りに進行しており,2022年度の成果の公刊に向けて,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、粘土という独特の素材の物性を利用し、目標とする形態に向けて粘土をダイナミックに成形する陶芸技能の検討を継続する。これまで申請者の研究グループは、伝統的な型の成形において、完成形の変異よりも、形態発生の変異の方が大きいことを明らかにし(Gandon et al., 2020)、文化伝達において個々の陶工がその時々の固有の状況において素材をその制約をみずから発見する質感知が重要な役割を果たす事実を見いだしてきた。2022年度は、(1)普段作っていない「新しい形態」を作ろうとするときに生じる形態の変異は、ランダムなのか、それとも個人・文化のバイアスが存在するのか、また、(2)「新しい形態」に向けて、素材を成形していく形態発生のルート(=作り手の行動)の変異は、ランダムなのか、それとも個人・文化のバイアスが存在するのか、さらに(3)形態発生の変異に対して、機械的制約はどのように作用するのか、という3つの問いについて実証的に検討する.10年以上の作陶経験者が普段作り慣れていない形態の陶器を制作する際に,動的に変化する粘土の形態をビデオデータから抽出し,楕円フーリエ解析を用いて,形態発生および完成形の形態を定量化し,個人と文化の影響を分析する.分析から得られた結果をもとにした研究論文を公刊するとともに、素材の物性を探り目的に向けて利用するプロセスと文化との関係に焦点をあてた質感知研究をめぐる理論的論文を新たに執筆する.
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Research Products
(10 results)