2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the neural circuit mechanism by which odor information acquires multidimensional value
Publicly Offered Research
Project Area | Analysis and synthesis of deep SHITSUKAN information in the real world |
Project/Area Number |
21H05833
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
眞部 寛之 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (80511386)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 嗅皮質 / 嗅覚情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
匂い情報から多次元的価値が生まれる神経回路機構を明らかにすることで、匂いの質感を生み出す機構を明らかにすることを目的とし研究を進めている。我々はこれまで、匂い情報と高次野からのトップダウン情報を連合すると考えられる嗅皮質の機能解明を続けてきた。そして最近、嗅皮質の一領域である外側嗅索核(nucleus of lateral olfactory tract:NLOT)という極小領域が、異なる匂い情報を分類し、それらと報酬情報を結びつける働きをすることを発見した。また、解剖学的にNLOTは、嗅球から直接投射を受けるとともに、他の嗅皮質亜領域と双方向的に接続があり、さらに扁桃体基底外側核、腹側線条体、内側前頭皮質という異なる価値情報を担う領野にも直接投射している。これらのことから、NLOTは匂い情報と報酬を結び付け符号化し、それを価値回路へ送ることによって、匂い情報に価値情報を付加するのではないかと仮定した。また、NLOTが複数の価値回路へ直接投射することから、NLOTは各々の価値回路への情報分配を調整することで、匂いの多次元的価値情報を表象するのではないかと仮定した。本年度は、NLOTの解剖学的性質を明らかにするとともに、匂いと様々な価値情報を付加させる学習行動実験系を構築した。また、NLOT-Creマウスを用いてNLOT特異的に遺伝子発現を行い、NLOT神経細胞の活動を特異的に制御する系を構築した。そして、匂いと価値情報の連合学習行動課題中のNLOT神経細胞を操作することでどのような行動変化が現れるのかを検証中である。また、今後は投射先ごとの神経細胞の発火特性も明らかにする。これらの研究を通じて、匂い情報を様々な価値に変換する神経回路機構を明らかにする。そしてその機構の解明は、感覚に深奥質感を与える重要なプロセスにつながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NLOTの解剖学的特性は古い知見しかなかったため、また、NLOT-Creマウスの有用性を検証する目的も兼ね、NLOT-Creマウスを用いて、解剖学的特性を明らかにする研究を行った。Cre存在下で蛍光タンパク質を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)をNLOTに投与し、その軸索をトレーシングした。その結果、これまで報告のあった両側嗅結節、扁桃体領域や、同側嗅球、前嗅核、腹側線条体、内側前頭前野などに投射が見られた。さらに眼窩前頭皮質にも投射が見られた。また、逆行性に感染し、Cre存在下で蛍光タンパク質を発現するAAVを内側前頭前野に投与すると、NLOTのIII層の細胞が主に陽性となり、扁桃体に投与するとII層の細胞が主に陽性になるなど、異なる細胞集団が異なる領域に投射することが明らかになった。 NLOTの機能を明らかにするために、匂いと様々な価値を連合する学習行動系を構築した。頭部固定下のマウスに、4種類の匂いが提示された後、報酬小、大、報酬確率1/2、罰となるair puffの4種類の価値を提示することで、各々の匂いと価値を連合させる課題を構築した。本課題は数日で成立し、成立したかどうかは、匂いを嗅いだ後それぞれの価値が提示される前にそれぞれの価値に応じた期待リック応答が起こるかどうかで判断した。 抑制性のDREADD(hM4Di)をCre存在下で発現するAAVをNLOT-CreマウスのNLOTに投与し、NLOT細胞特異的にhM4Diを発現させる系を確立した。上記課題中にDeschloroclozapine(DCZ)を投与し、NLOTの細胞の活動を抑制させることで、行動変化を観察する系を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
Cre依存的に蛍光タンパク質を発現する様々なAAVを用いて、NLOT出力の解剖学的性質をさらに明らかにする。特に、どのような細胞集団がどこに投射するかを明らかにする。また、NLOT神経細胞の細胞種についての情報もないため、どのような細胞種の集団であるかをin situハイブリダイゼーション法などを用いて検証する。 確立した行動課題を用いて、NLOTの機能を明らかにする。確立したDREADDの系を持ちいて、NLOTの活動を抑制したとき、行動課題遂行中のマウスがどのような行動変化を起こすかを明らかにする。また、光遺伝学的手法を用いて、それぞれの細胞の特異的投射と行動変化の関係を検証し、NLOT神経細胞の投射先ごとの機能を明らかにする。具体的には、NLOTに抑制性のオプシンであるアーキロドプシンを発現させ、行動課題遂行中の各投射先の軸索を抑制する。 また、電気生理学的手法を用いて、NLOTの神経細胞が行動課題中のどのような要素に応答するのかを検証する。さらに、電気生理学的手法と光遺伝学手法を組み合わせ、投射先と神経細胞の応答特性の関係を明らかにする。具体的には、投射先特異的にNLOT神経細胞に興奮性のオプシンであるチャネルロドプシン2(ChR2)を発現させ、電極と光ファイバーを組み合わせたオプトロードをNLOTに挿入することで、神経細胞の活動を記録しつつ、光を照射することで人工的に活動電位を起こし、ChR2陽性細胞をin vivoで同定するタギング法を用いる。 これらの研究を通じて、NLOTの投射先ごとの機能を明らかにし、匂い情報を様々な価値に変換する機構を明らかにする。
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