2021 Fiscal Year Annual Research Report
双対過程に基づくサンプリング不要な統計量計算手法のアルゴリズム論的解析と効率化
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Organization of Innovative Algorithmic Foundations for Leading Social Innovations |
Project/Area Number |
21H05843
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
大久保 潤 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70451888)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | 確率微分方程式 / 双対性 / 組合せ論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまで研究代表者にあまり馴染みのなかった組合せ論と離散的構造処理に基づく理論についての知見を収集し、確率微分方程式の双対過程の数値計算への適用をおこなった。 確率微分方程式の統計量を計算する際、通常はシミュレーションを何回も実施し、そのサンプリング結果の平均を取るなどが必要となる。なお、サンプリングした結果から、平均や分散など、さまざまな統計量を計算することが可能である。一方、研究代表者の提案している双対過程を利用する方法では、組合せ論的なアルゴリズムにより、サンプリング不要で統計量を「狙い撃ち」して計算できる。例えば平均値のみを計算することができるため、余計な計算をしないことから、計算量削減につながることが期待される。しかし、変数の数が増えた場合などにアルゴリズムの計算量がどのように変わるか、これまでは検討されていなかった。 そこで、主に領域参加者にも色々と教わりながら、ZDDの構造や計算量の見積りの方法を、確率微分方程式に対する双対(随伴とも呼ばれる)にどのように活用するかを検討した。その上で具体的には、既存のアルゴリズムの計算量を数値的に評価し、さらに理論的に予測されるものとの比較を実施した。変数の数を系統的に増やしながら調査を進めた結果、数値的な評価は理論的に予測されるものとほぼ一致し、計算量のオーダーは変数の数に指数関数的に依存することが明らかとなった。一方で、最終的な結果に寄与しない途中計算の部分が多いことも予想されるため、近似計算を利用することで計算量を削減できる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、計算量の見積りの数値計算を実施できた。さらに、もし可能なら、という形で考えていた理論的な計算量の見積りについてもおおまかに実施することができ、数値実験の結果と比較をすることができた。そのため、おおむね順調に発展していると言える。 採択決定からの研究期間が短かったことから、結果を発表するまでには至らなかったものの、最終年度(2年目)の発表も予定できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り進んでいるため、最終年度(2年目)は予定している近似手法の研究に着手する予定である。実際、本年度の検討により、ある程度の近似が可能である見込みが示唆された。 なお、現在のアルゴリズムでは動的計画法を利用している。この方法は統計量を計算する際には非常に高速に動作するが、一方で適切な近似方法を模索するのが難しい。組合せ論的なアルゴリズムにおいて、不要な経路を枝刈りする近似を採用することを予定しているが、具体的にどの経路が不要であるかを調べづらいのがその理由である。 本年度の調査により、BDDやZDDといった離散構造の利用が可能であることがわかり、これにより不要な経路についての検討が容易になる見込みである。そこで、離散構造を利用しながら枝刈りの手法を模索していく予定である。
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Research Products
(1 results)