2021 Fiscal Year Annual Research Report
Universal molecular motor for DNA nanorobot
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Cybernetics -Development of Minimal Artificial Brain by the Power of Chemistry |
Project/Area Number |
21H05898
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
酒井 雄介 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (10895501)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | DNAナノテクノロジー / 分子機械 / 生化学 / 分子ロボット / 原子間力顕微鏡 / マイクロ流体デバイス / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAは、相補的な配列を持った分子同士で自発的に二重らせん構造を組む性質を持ち、容易に化学合成可能で、二重らせんの形成を自在に設計することができるため、ナノ構造や論理演算回路を設計・構築する材料として盛んに研究が行われている。本研究では、DNAを旋回させる天然の酵素を、DNAナノロボットの駆動モジュールとして活用するための方法論の確立を目指している。 実験系として、酵素の基質となる二重鎖DNA(「駆動軸」)の両端を、剛性のある弓型の構造体で結んだDNAナノロボットを新規に設計・構築し、これを用いて「駆動軸」および天然、または改変した酵素からなる動力モジュールを、DNAナノ構造体に導入する汎用的な方法論を検討する。また、微量のDNA折り紙構造体を作成する流体デバイスを開発し、DNA折り紙研究の効率化を図る。 (1) DNA構造体と酵素の相互作用の最適化:DNA構造体における酵素の性質を評価し、最適化した。しかし、酵素の活性が低下する問題が発見され、その最適化を進めている。なお、単分子解析のための計算環境の確立を先行して達成し、その計算資源をDNA構造体設計における粗粒子モデル解析に活用している。 (2) 酵素のDNA構造体への固定化:足場DNAに酵素が認識する配列を組み込み、効率を向上させるアプローチで検証を進めている。 (3) DNA構造体側の基質DNAの固定方法:現在進行中のアプローチがDNA構造体のアセンブリを阻害する懸念があり、新たな基質DNA固定方法として光架橋とDNAライゲースを使用することを検討中。 (4) DNA分画デバイスの作成:DNA固定化樹脂の検討を完了し、試作やシミュレーションを用いて流体デバイスの熱制御に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1) DNA構造体上における当該酵素の性質の評価と最適化については、予備検討で用いたサンプルでは「駆動軸」の長さが不足したため、研究協力を受けているヤギェウォ大Heddle研にて新たに足場DNAをカスタム構築した。理研にて新規設計したDNAナノロボット(弓を模した剛性の棒状の構造体の両端を足場DNAで構成された二重鎖(弦)で繋いだもの。弦に酵素が作用する効率を剛体部分の変形で観測するようになっている)を用いて検証を進めている。今年度の研究の結果、当初想定していたAFM観測に適した濃度域では酵素が不安定化し、酵素活性が低下することが判明した。そのため、必要な添加物の絞り込みや、高分子による分子混雑効果による安定化などの最適化に時間がかかっている。現時点で、弓型のDNAナノロボット上の基質にも構想通り酵素が作用することを支持する結果を得た段階にある。また、単分子解析用の計算環境整備を先行して実施し、oxDNAによるDNA構造体の粗粒子モデル解析を活用したDNA構造体の設計を行っている。 (2) 酵素のDNA構造体への固定化方法の検討については、基質となる二重鎖DNAに酵素認識配列を組み込むアプローチを取った。 (3) DNA構造体側の基質DNAの固定方法の検討については、(1)で記述したように、二重鎖を組む相補鎖配列を持つ足場DNAを用いることで、あらかじめ基質DNAがDNA構造体に固定された実験系で検証を主に行った。その中で、DNA構造体のアセンブリの過程で意図せぬトポロジー的なストレスが構造にかかり、結果の解釈を困難にしている恐れが明らかになった。そのため、事後的に固定化する方法として、光架橋とDNAライゲースを用いる二手法の検討を開始した。 (4) DNA分画デバイスの作成:充填するDNA固定化樹脂の検討を完了し、流体デバイスの熱コントロールを行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)DNA構造体上における当該酵素の性質の評価と最適化:2021年度に明らかとなった諸課題を踏まえ、引き続き、反応条件の最適化を進める。また、弓型構造の部分をより長くしたものを構築し、実験系のS/N向上に努める。2022年度中に、酵素をDNAナノロボットと共に用いるための諸条件を確定することを目指す。また、弓型DNAロボットの動作について、反応前後のスナップショットのみでなく、高速AFMを用いた観測を試みる。 (2) 酵素のDNA構造体への固定化方法の検討:酵素認識配列を持たないDNAナノロボットを構築して、現在得ている結果を補強するとともに、酵素をDNA構造体にアンカーするアプローチについて検討を始める。 (3) DNA構造体側の基質DNAの固定方法の検討:昨年度末に開始した、光架橋やDNAライゲースを用いて、DNA構造体構築の後に基質DNAを固定化するアプローチについて、さらなる検証を進める。 (4) DNA分画デバイスの作成:4サンプルの同時構築を目標に初号機となるデバイスの完成を目指す。
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Research Products
(2 results)