2011 Fiscal Year Annual Research Report
InPダイオードと液体キセノンを用いた低エネルギー太陽ニュートリノ検出器の開発
Publicly Offered Research
Project Area | New Developments of Flavor Physics |
Project/Area Number |
22011001
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
福田 善之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40272520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (50313044)
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Keywords | ニュートリノ / 素粒子実験 / ニュートリノ振動 / 太陽ニュートリノ / 半導体検出器 / 液体キセノン |
Research Abstract |
1MeV以下の太陽ニュートリノの観測を目的として、^<115>Inのニュートリノ捕獲を用いたInP半導体検出器を開発した。半絶縁性InP半導体基板を用いて、薄膜電極化Au(100A)/Cr(100A)のInP検出器を製作に成功した。しかし、通常のガンマ線事象は観測可能であったが、5MeVα線によるCsIシンチレーション光の信号による電荷量は0.05fC予想され、ノイズに隠れて観測できなかった。薄膜電極でもシンチレーション光の電極での減衰が50%以下になることが原因と考えられた。そこで、薄膜電極の厚みを50Aの検出器を開発した。さらに、暗電流によるノイズの低減化を図るために、Vertical Bridge法により結晶成長させたInP基板を使用した。その結果、比抵抗が従来の4.5×10^7Ωmから6.3×10^7Ωmに改善し、ノイズレベルが60%程度に減少した。また、CaIシンチレーション光を集光するため、InP検出器の周りにミラーを導入した。その結果、予想電荷量が0.8fCとなり、十分可能な状況となった。一方、液体キセノンのシンチレーション観測実験のための小型チェンバーを作成したが、液体窒素による冷却が十分ではなかった。そこで、冷却部分の接着や熱伝導を効率化させるために振動抑制の装置を外すなどの改良を行った。その結果、冷却時間が2時間程度必要であるが、内部チェンバーの温度が-100度を下回ることが確認できた。従って、キセノンガスの液化が可能となり、薄膜電極InP検出器を導入する予定であった。ところが、50AのInP検出器でもCsIシンチレーション光を観測できなかった。これは、InP半導体の量子効率を当初0.8と仮定していたのが、実際には0.1以下であったことによるものであった。従って、液体キセノンのシンチレーションは観測できないことが判明した。しかし、新たにEPDが0の半絶縁性InP基板による検出器を開発に成功し、大型化の実現に向けて可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していたInP半導体によるシンチレーション光の観測において、InP半導体の量子効率が当初の予想よりも小さい値であったことから、観測が困難となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
InP半導体によるシンチレーション光の観測は困難となったが、EPDが0である画期的な半絶縁性InP基板を得ることができ、これまで問題であった検出器の大型化が実現できることがわかった。したがって、低エネルギー太陽ニュートリノ観測装置の設計を変更し、液体キセノンのシンチレーション光はXMASS実験で使用しているものと同様の光電子増倍管で観測することとし、InP検出器はニュートリノ反応による電子のエネルギーを観測することにすることで実現化できると考えられる。
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