2010 Fiscal Year Annual Research Report
重力レンズ効果における尤度関数の精密決定
Publicly Offered Research
Project Area | Probing the Dark Energy through an Extremely Wide & Deep Survey with Subaru Telescope |
Project/Area Number |
22012004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
市來 淨與 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教 (10534480)
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Keywords | 宇宙物理 |
Research Abstract |
遠方の銀河が、近傍の大規模構造の重力ポテンシャルによって変形を受ける宇宙論的「弱重力レンズ効果」は、直接暗黒物質・宇宙背景ニュートリノ分布のプローブになるだけでなく、その幾何学的な効果から暗黒エネルギーの影響も測ることが可能であり、非常に重要な効果である。本研究は、この弱重力レンズ効果の観測と理論を比較するための尤度関数を金融工学で使われている、コプラと呼ばれる関数を用いて精密化することにより、新しい尤度関数を提案し、弱重力レンズのデータからこれまで以上に信頼できる宇宙論パラメタの推定を可能とすることが目的である。 初年度は期待以上の進展があった。まず重力レンズ効果のシミュレーション結果から一点分布関数がカイ二乗関数で表現できることが分かったため、この解析的な表現とガウシアンコプラを用いて表現されるコプラ尤度関数が、シミュレーションした全範囲のスケールでシミュレーション結果を再現できることを発見した。これは、従来用いられていた多変量ガウシアン分布より統計的にも優位であることを赤池の情報量基準などを用いて示すことができた。また、その結果をダークエネルギーの状態方程式に対する制限に応用したところ、用いる尤度関数の違いが、制限結果へ数パーセント程度のバイアスを与えてしまうことが明らかになった。これはこれからの精密宇宙論では無視できないバイアスである。これらの結果をPhysical Review Letters,およびPhysical Review Dに投稿し、すぐに受理され結果が掲載されている。
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