2011 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレン超伝導の第一原理的解析と新物質探索
Publicly Offered Research
Project Area | New Materials Science Using Regulated Nano Spaces -Strategy in Ubiquitous Elements |
Project/Area Number |
22013005
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
是常 隆 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (90391953)
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Keywords | ゼオライト鋳型炭素 / 第一原理計算 / 反転対称性の破れ / 軌道磁性 / 電子格子相互作用 |
Research Abstract |
本特定領域の一つの重要なトピックであったゼオライト鋳型炭素について、計画班のメンバーとも協力し、その電子状態を明らかにした。具体的には、ゼオライト鋳型炭素の一つの候補として考えられている、C_36H_9という構造を持つ物質について着目した。この物質は、sp^2ネットワークからなる三次元結晶であり、また反転対称性を持たないという非常に興味深い構造を持っている。そこで、電子状態計算を行ったところ、0.8eVほどのバンドギャップをもち、価電子帯の頂上には非常に平坦なバンドが現れることが分かった。さらに、この平坦なバンドをより詳細に調べてみると、この状態が軌道磁化を持つ状態からなっていることが分かった。興味深いことに、この軌道磁化を持った状態は、反転対称性の破れに伴い、Γ点以外では縮退が解けていることが分かった。これは、反転対称性の破れた系においてスピン軌道相互作用によってスピンの縮退が解けるというRashba系等と非常によく似た興味深いバンド構造である。実際、Rashba系で観測されているような、電流誘起の軌道磁化などが期待されることが分かった。これは、スピントロニクスの軌道磁性版という新たな可能性を実際の物質をもとにして示したものといえる。またスピン軌道相互作用が必要ないというのも今後の物質設計を考える上では見逃せない点である。今後この研究をもとにさらなる発展が期待される。 また、超伝導の第一原理的解析を念頭におき、電子格子相互作用がバンド構造そのものに及ぼす影響についても研究を行った。その結果、バンドギャップが電子格子相互作用によって有意に変化することを定量的に示した。この結果は実験結果もよく再現しており、今後電子格子相互作用が強い系を考える上でも非常に重要な意味をもつと考えられる。
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Research Products
(6 results)