2010 Fiscal Year Annual Research Report
配列ナノ空間における特異な物性の解明と高機能デバイス開発における振電効果の役割
Publicly Offered Research
Project Area | New Materials Science Using Regulated Nano Spaces -Strategy in Ubiquitous Elements |
Project/Area Number |
22013017
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
加藤 貴 長崎総合科学大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (10399214)
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Keywords | ピセン / 超伝導性 / 電子-フォノン相互作用 / ポリフェナセン / オームの法則 / 反磁性超電流 / トンネル効果 / 電流-電圧特性 |
Research Abstract |
1.芳香族炭化水素ピセンにおける超伝導性に関する理論研究 2010年に芳香族炭化水素であるピセンアニオンが7K及び18Kで超伝導性を発現するという報告があった。それに先んじて我々は、2002年にピセンアニオンが10K程度で超伝導性を示す可能性を、電子-フォノン相互作用の考察により提案していた。これらの研究背景をもとに、高温超伝導実現を目指して、ピセンと同様、ベンゼンがジグザクに連なった分子であるポリフェナセン分子で、よりサイズの小さな、クリセンアニオン、フェナントレンアニオンについても同様の考察を行なった。電子-フォノン相互作用の詳細な解析により、クリセンアニオンでは、55K程度で、さらにはフェナントレンアニオンでは100K近くで超伝導性を発現する可能性を示した。この研究成果は日経産業新聞(2010年11月18日)、日本経済新聞(2010年11月22日)、日本経済新聞電子版(2011年1月14日)に紹介された。特にその中で、我々の理論予測と共同研究先の岡山大学の久保園芳博教授の実験研究に関し、「実際に合成できれば、長足の進歩だ。ノーベル賞級の成果に発展する可能性も秘めている。」と日本経済新聞(2010年11月22日付)で紹介された。 2.TTF-TCNQ分子性結晶固体におけるオームの法則に従わない、電流-電圧特性の原因に関する理論研究 TTF-TCNQ分子性結晶固体におけるオームの法則に従わない、電流-電圧特性の原因について新たな理論を提唱した。この現象の原因は、J.Bardeenが1973年に提唱して以来、定説となっている「インコメンシュレートな電荷密度波の滑り運動」によるものと考えられていた。しかし我々は、精密な理論考察、計算によって、J.Bardeenの理論の矛盾を指摘し、むしろ、各ユニット内に局在化した反磁性超電流が隣接ユニット間でトンネル効果を起こすためにこのような現象が生じると、提唱した。我々の本論文の図が、同巻号に発表された42編の論文(Synth.Met.,161)の中から、表紙を飾る図に選出された。
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Research Products
(13 results)