2010 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル磁性を有する遍歴磁性体における異常磁気伝導
Publicly Offered Research
Project Area | Novel States of Matter Induced by Frustration |
Project/Area Number |
22014003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野瀬 佳文 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (80436526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 敏 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (50431789)
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Keywords | 異常ホール効果 / スピンカイラリティー / スカーミオン |
Research Abstract |
フラストレーション系においては、複数の相互作用のせめぎ合いの結果、スピンカイラリティーが有限の非共面な磁気構造がしばしば生じる。そのような系では、電子はスピンカイラリティーに比例する仮想的な磁場を感じ、そのため異常な磁気伝導現象が観測される。本研究の目的は、B20構造遷移金属化合物とパイロクロアモリブデン酸化物を中心としたカイラル磁気構造体においてスピンカイラリティーによって誘起される異常磁気伝導を開拓することにある。平成22年度は、B20遷移金属化合物のヘリカル磁性体において3つのヘリカル磁気構造の干渉によって発現したトポロジカルな磁気構造体スカーミオンの結晶化状態の研究を行った。まず、物質材料機構の松井グループと共同でローレンツ電子顕微鏡を用いてFe0.5Co0.5Siにおけるスカーミオン結晶の実空間観察に成功した。観測された実空間像においては、スカーミオンの結晶化状態に加えてスカーミオンのアモルファス状態や強磁性状態の中に孤立したスカーミオン単体も観測されており、スカーミオン単体の駆動が可能であることが示唆された。また、ヘリカル磁性体である試料薄膜の薄膜化がスカーミオン結晶の安定化に有効であることが示唆され、この知見をもとに高臨界温度のヘリカル磁性体FeGeを用いることにより、室温付近でスカーミオン結晶状態を安定化させることに成功した。この物質では、スカーミオンが有する渦状のスピン配列の方向が異なる二つのドメインを観測することにも成功した。このスカーミオン結晶では、スピンカイラリティーを有するためトポロジカルホール効果やスカーミオン駆動によるスピン起電力など異常磁気伝導を発現することが期待される。
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Research Products
(6 results)