2011 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル磁性を有する遍歴磁性体における異常磁気伝導
Publicly Offered Research
Project Area | Novel States of Matter Induced by Frustration |
Project/Area Number |
22014003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野瀬 佳文 東京大学, 工学系研究科, 講師 (80436526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 敏 東京大学, 金属材料研究所, 准教授 (50431789)
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Keywords | 異常ホール効果 / スピンカイラリティー / スキルミオン |
Research Abstract |
フラストレーション系においては、複数の相互作用のせめぎ合いの結果、スピンカイラリティーが有限の非共面な磁気構造がしばしば生じる。そのような系では、電子はスピンカイラリティーに比例する仮想的な磁場を感じ、そのため異常な磁気伝導現象が観測される。本研究の目的は、B20構造遷移金属化合物とパイロクロアモリブデン酸化物を中心としたカイラル磁気構造体においてスピンカイラリティーによって誘起される異常磁気伝導を開拓することにある。平成23年度は、B20遷移金属化合物で短距離のヘリカル磁気秩序が発現するMnGeにおいてスピンカイラリティー誘起の大きなトポロジカルホール効果を観測することに成功した。これは、磁場下の高密度なスキルミオン格子によるものであると考えられる。温度磁場依存性の詳細な解析の結果、このホール効果は実空間のスピンカイラリティー密度がホール効果と関係する実空間描像で理解できることが明らかになった。一方でパイロクロアモリブデン酸化物では、(Y,Cd)_2Mo_2O_7において、スピン間のフラストレーションの結果として、極めてdiffusiveな輸送現象を示す異常な金属状態が現れることを明らかにした。さらにここにイジング性の強いTbをドープしていくとスピン密度の高次のべきでホール抵抗率が立ち上がってくる振る舞いが観測され、三つの磁気モーメントの相関であるスピンカイラリティーによるものであることが示唆された。このような常磁性体にイジングモーメントをランダムに入れていった場合でもスピンカイラリティーが働くことが明らかになった。
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