2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子スピンが引き起こすマルチフェロイック相の新奇物性の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Novel States of Matter Induced by Frustration |
Project/Area Number |
22014005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 幸夫 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80345850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺崎 一郎 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30227508)
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Keywords | マルチフェロイック / 強相関電子系 / 磁性 / 誘電体物性 / 量子スピン |
Research Abstract |
LiVCuO_4を代表例としてCuO_2リボン鎖系と呼ばれるいくつかの物質は、helicalな磁気秩序に起因して強誘電性が誘起されるmultiferroic物質であることが知られているが、本研究では同様のCuO_2リボン鎖を有するPbCuSO_4(OH)_2とRb_2Cu_2Mo_3O_<12>を取り上げ、その磁気構造と誘電特性について調べた。PbCuSO_4(OH)_2はT_N=2.8Kで反強磁性に転移するが、多結晶試料による誘電率の測定によりT_Nでピークが観測され、強誘電分極の測定でもT_N以下で有限の強誘電分極を観測した。これらの結果からPbCuSO_4(OH)_2はCuO_2リボン鎖系の中でLiVCuO_4とLiCu_2O_2に続く3例目のmultiferroic物質であることが分かった。さらに単結晶試料を用いて磁場や電場の印加方向を指定した条件下で磁化率および誘電率の詳細な測定を行うとともに、中性子磁気構造解析を行った。中性子回折実験ではT_N以下でQ(0,0.189,1/2)のincommensurateな指数を持つ磁気反射を観測し、磁化率の結果と合わせて解析した結果、基本的にはCuO_2面内のhelical磁気構造を持っていることが分かった。得られた磁気構造と強誘電分極Pの相関をみると、P∝9×e3(Q : modulation vector,e3 : helical axis)の関係を満たすことがわかった。この結果は既報の理論的指摘とも一致している。一方、Rb_2Cu_2M_<o3>O_<12>は少なくとも2Kまでは長距離秩序を持たないが、多結晶試料による誘電率測定により50K付近から低温にかけて誘電率の増大が観測された。この誘電率の増大は低温において成長したhelical的な短距離秩序によるものと考えられる。さらに磁場中で誘電率を測定した結果、8K付近に磁場誘起の強誘電転移が出現することを見出した。
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