2010 Fiscal Year Annual Research Report
有機磁性体による幾何学的スピンフラストレーションの創出と量子効果
Publicly Offered Research
Project Area | Novel States of Matter Induced by Frustration |
Project/Area Number |
22014011
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
細越 裕子 大阪府立大学, 理学系研究科, 教授 (50290903)
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Keywords | 三角格子 / 有機磁性体 / フラストレート / 磁化率 / 結晶構造 |
Research Abstract |
隣接スピン間で磁気相互作用が競合する幾何学的スピンフラストレーション系においては、スピンの量子揺らぎの効果が大きくなり、スピン液体状態が実現するとされている。スピンの固体状態とも言うべき磁気秩序状態とは全く異なる非秩序状態の実現は、新しいスピン状態としての学術的な興味と、新しいスイッチングデバイスとしての応用への期待がもたれている。 本研究は、C, H, N, Oといった軽元素のみから構成される有機ラジカル磁性体を用いて、S=1/2三角格子反強磁性体の構築および低温物性研究を行うものである。本年度は、主に以下の研究を行った。 (1)TNN・CH_3CN結晶の極低温下の比熱測定を行い、0.25Kで反強磁性秩序を起こすことを発見した。さらに磁場中熱測定を行い、9-11Tの外部磁場を印加すると、磁場誘起相転移が起こることを発見した。 (2)新しい三角格子磁性体の構築に向けて、フェルダジルラジカルを分子内に複数置換したビラジカルの合成を行った。置換する位置によって最適な反応条件は異なるが、ポリラジカル化に適した反応条件を見つけることができた。 (3)分子内に強磁性相互作用と反強磁性相互作用を含む二等辺三角形トリラジカルBIPNNBNOは、3種類の分子間磁気相互作用によってフラストレートした基底状態が期待されている。低温磁場中比熱測定の結果を、磁化・磁化率と合わせて解析し、支配的な分子間相互作用を同定することに成功した。一方、単結晶を用いた電子スピン共鳴の実験結果からa軸方向の磁気相互作用が強いことが示唆されたが、これは比熱の解析結果と一致するものである。
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Research Products
(15 results)