2010 Fiscal Year Annual Research Report
核の量子性を考慮したトリチウム化学反応過程の理論的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Tritium Science and Technology for Fusion Reactor |
Project/Area Number |
22017002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Keywords | トリチウム化学 / 反応動力学 / 同位体効果 / 水素原子拡散 / 表面反応 / 量子効果 |
Research Abstract |
本研究ではトリチウムの関わる同位体反応機構を理解するために、TとFeとの相互作用によって起こる吸着・解離、溶解・拡散現象についてミクロな視点からアプローチした。 吸着・解離現象に関して、我々はFe_n・H_2O(n=1-3)クラスター系を用いた量子化学計算を実行することでFeの酸化反応経路や反応における同位体効果を見出した。ゼロ点振動エネルギーを含んだ量子化学計算から、水分子が解離してFeと結合した構造が最安定であることや、HとOHに分かれてFe_nと反応する際の反応障壁はFeが増えるにつれ減少することを見い出した。また、H_2OをHTOに同位体置換した結果、n=1,2ではH_2OはOT+Hに解離し、n=3ではOH+Tに解離することを求めたが、その反応における安定構造間のエネルギー差はH_2OとHTOで同程度であった。 溶解・拡散現象では、Fe格子(bcc)中における水素同位体の拡散機構を扱った。Fe格子中での水素原子は、4つのFe原子で作られる四面体の中心(T-site)にトラップされ、このT-site間を移動(拡散)する。その拡散機構には2つの経路が存在し、一つはT-site間を直接移動する経路と、もう一つは6つのFe原子で作られる八面体の中心(O-site)を経由して移る経路である。しかし、HやTはトンネル効果といった核の量子化に伴う現象が顕著に表れるため、単純なポテンシャル上を動くのではなく核の量子性を含んだ量子ポテンシャル上を動くことになる。そこで量子シミュレーション計算を行い自由エネルギー面上での拡散機構における同位体効果や温度依存性を解析した。その結果、温度上昇とともに自由エネルギー面上の反応障壁が高くなるだけでなく、二つの経路の反応障壁のエネルギー差はHに比べTはより大きくなることが分かった。
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