2011 Fiscal Year Annual Research Report
核の量子性を考慮したトリチウム化学反応過程の理論的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Tritium Science and Technology for Fusion Reactor |
Project/Area Number |
22017002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Keywords | トリチウム化学 / 反応動力学 / 同位体効果 / 水素原子拡散 / 表面反応 / 量子効果 |
Research Abstract |
本研究では、Fe材料とトリチウム水(HTO)の相互作用により起こるトリチウムの透過現象について、三段階の同位体化学反応過程として捉え、理論化学計算を用いてその反応機構の解明を試みた。 まずFe(100)表面にHTOが接近して起こる吸着・解離反応について、HTOはOT+HとOH+Tの二つの解離反応過程の存在が予想される。そこでゼロ点振動補正されたエネルギー準位をみると、活性化エネルギーは後者よりも0.05eV低く、系としてOT+Hに解離しやすいことが分かった。この結果は、トリチウムの化学反応機構には核の量子化に伴う同位体効果の影響を受けることを意味する。また、解離したT(H)のFe格子中への溶解反応においても、H溶解する際の活性化エネルギーはTの場合に比べ0.03eV低く、HよりもTはFe材料に侵入しやすいことが分かった。 次に、Fe格子中の軽水素、トリチウム原子の拡散反応について、量子動力学計算手法であるセントロイド分子動力学法とリングポリマー分子動力学法を用いることにより、自己拡散係数と自由エネルギーを算出した。その結果、軽水素原子については、2つの量子動力学計算により求まった拡散係数は、実験値と非常に良く一致した。また、古典動力学と比較すると、高温側では一致しているのに対し、200K程度以下の低温側ではトンネル効果のため、大きくずれていることが分かった。本研究で、トリチウム原子の拡散係数を定量的に見積もることができることを示すことができた。 以上、理論計算によって、実験では難しいトリチウムの関わる化学現象の物理量を算出する目途がついたと結論した。
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