2010 Fiscal Year Annual Research Report
トリチウムの環境挙動と生体影響の知見に基づく漏洩制御
Publicly Offered Research
Project Area | Tritium Science and Technology for Fusion Reactor |
Project/Area Number |
22017004
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
登尾 一幸 京都大学, 生存基盤科学研究ユニット, 助教 (40456827)
|
Keywords | トリチウム / 核融合炉 / 環境測定 / 低線量被曝 / 物質移行 |
Research Abstract |
核融合施設から通常運転時に放出されるトリチウムが食物や吸入、環境を通じて人体に取り込まれる、あるいは農作物や環境自体のトリチウム濃度が上がることを記述するモデルを作成し、同時にその中で特に重要な移行挙動パラメータについて模擬実験により測定を行った。 核融合施設から放出されたトリチウムの大気中移行挙動は、まずガウスプルームモデルにより計算されるが、従来は地上で全反射する仮定となっていた。実環境では海面や水田のような大きな水素同位体シンクとの間の同位体交換が大きな影響を及ぼすことがわかっており、このパラメータ(移行速度定数)を模擬実験により測定した。実験では試験容器内に予めトリチウム水蒸気を導入した状態で軽水を導入し、定期的にサンプリングした気相・水相中のトリチウム濃度の時間変化より計算した。沈降速度定数の測定結果は水相の撹拌速度に依存し、かつその値も大気中濃度に影響を与える範囲を示した。これは、水面の状態が実際の大気中トリチウム移行挙動に大きな影響を与えることを表わすものである。 一方、トリチウムの環境中要素間の移行はコンパートメントモデルにより記述されている。トリチウムより放射されるβ線の人体内での平均飛程は細胞の大きさより短いため、人の健康に影響を与え得るのは細胞中DNA近傍にまで達したトリチウムのみであると考えられる。そのため、飲食物からDNAへのトリチウム移行をシミュレートするため、大腸菌をトリチウム水もしくはトリチウム化グルコースにより培養し、DNA中トリチウム濃度を測定した。より精密な実験を行う必要があるが、得られた結果は従来の線量評価と比較し、有機結合型トリチウム(OBT)の寄与が大きいことを示している。
|
Research Products
(6 results)